Post-0175

魔法使い「では、詳しいお話を……。っていうか皆さんお酒持ってますね」
僧侶「ただいま戻りました。今日は一つ笑顔を守れたいい日になりました」
戦士「お、お帰り。せっかくだから飲んじまうか。そっちの子はイケる口?」
禁術娘「めちゃくちゃ緊張感ないねェ」
騎士「常に張り詰めているといつか切れるからな。張り詰めずに網を張っておくのが冒険者だ」
禁術娘「アハハ、お見事。せっかくだから、貰おうか、ねェ。禁術娘って呼んでいいよ」
戦士「よろしくな、禁術娘。じゃ、カンパーイ!」
魔法使い「あれ?ああ、あの時ぶりです、呪術女さん」
呪術女「……!?し、失礼、つい、夢中に」
蛮族娘「呪術女、甘い物、大好き。夢中に、なる」
盗賊娘「おいしかったもんね、あのパイ。もう一個食べたかったなぁ……」
看板娘「はいよ!ちょっとお高いよ!なにせ時価だからね!」
術士「あるだけ持ってきてくれ。蛮族娘も呪術女もおかわりいるだろ?そっちの子は?」
看板娘「まいどー!」
禁術娘「……」
盗賊「だから、全員、油断はしてねえって。左手にあるその粉、ろくな効果じゃないんだろ?」
騎士「そこまで我々を試して、何がしたいのだ?もちろん魔法使いが連れてきた客人、可能な限り助力はするが、あまり試されても気分が良いものではない」
禁術娘「わかった。アンタらのその感度なら確かにアタシの兄、禁術使いを倒せる。破術争奪戦でも上位の男をだ」
戦士「禁術使い……?聞いた事ねえ名前だな」
騎士「いや、銀騎士殿が取り調べで答えていた。辺境にいたあの魔術師だな。であれば、我々は倒してない」
禁術娘「……は!?」
盗賊「あの魔術師を倒したのは、お前の横にいるまほクンと、そっちでパイ食ってる呪術女の2人だよ」
禁術娘「二人で……?」
魔法使い「厳密にいうと僕も主戦力じゃないです。主にあっちの呪術女さんのお手柄です」
禁術娘「あそこでパイ食ってる……?隙だらけじゃないか……」
戦士「酒場で飛び道具を投げるのはナシだ」
魔法使い「呪術女さんは歌のプロフェッショナルです。肉弾戦では計れないですよ」
禁術娘「ちょっと、待ってよ、ねェ。クソ下らない破術争奪戦を終わらせる手伝いを頼みたいんだ。誰に頼めばいいんだい……?」
魔法使い「大丈夫です。みんな、協力してくれます」
禁術娘「油断すると破術をぶち込まれるとんでもない依頼なんだよ……?」
魔法使い「頼まれなくても、禁術娘さんのそばにいるならぶち込まれる可能性があるんでしょう?なら、終わらせましょう?」
盗賊娘「ごめんね、詳しく聞かないとなんとも言えないけど、あなたのそばにいる事で誰かが怪我したり死んだりするなら……」
戦士「悪いのはお前じゃなくて、ちょっかいかけてくる奴だよな」
盗賊娘「だから、こう言うよ。『そんな奴はぶっ飛ばせばいい』って」
禁術娘「参った。修羅場くぐってるのはアタシだけじゃないんだ、ねェ。とりあえず、そのパイ貰おうか」
蛮族娘「パイ、美味しい!」
禁術娘「アハハ、落ち着いて甘い物なんて食うの、もういつぶりか覚えていないよ、ねェ……」

#ズレよし
#ちょっとズレてるお人好しども
#日常編

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Post-0171

呪術女『久しぶりだな蛮族娘。我も王国に招かれた。邪魔でなければここに滞在したい』
蛮族娘『久しぶり、呪術女。オレは熊の皮を得て熊の勇者になった』
呪術女『それは喜ばしい。母熊の如く、弱き者を守れるようになったのだな』
蛮族娘『いや、雄叫びと共に意識を失う』
呪術女『なら、それはまだ仮初めの力。個で守り、群れで攻めるが勇者。お前はまだ守れていない』
蛮族娘『なら、もっと修行するよ』
呪術女『我は勇者ではない。故に教えられない。励め』
蛮族娘『もちろん!』

盗賊娘「蛮族娘、嬉しそう」
盗賊「まあ、普段魔法使い以外に言葉通じないしな」
盗賊娘「私ももうちょっと頑張って言葉覚えよう……」
術士「凄く良い事だな。聖騎士女も辺境の言葉上手いから習うといい」
盗賊「ところで呪術女、王国領に何か用事があったのか?よしみだ、何でも手伝うぞ」
呪術女「我、魔法学院、呼ばれた。我らの、呪術、は、魔法、と、違う、が、研究したい、と」
盗賊「なるほど、魔法使いのやってたアレだな」
呪術女「かわりに、我、魔法、学ぶ。魔法使い、我に、呪術、と、魔術、組み合わせる、見せて、くれた」
術士「はははは!なるほどな、魔法学院がやりたい事を呪術女もしたい。完全に対等だ」
呪術女「我ら、辺境開いた、役割、終えた。でも、我ら、生きる。生きる、には、目的、が、必要」
盗賊娘「そうだね……。生きるために生きるだけじゃなく、何か『したい』があるといいよね」
蛮族娘「オレ、強い、勇者、なる、目的!でも、盗賊娘、仲良い、も、目的!」
盗賊娘「ありがとう、凄く嬉しい。わたしも蛮族娘と一緒にいたいよ」

#ズレよし
#ちょっとズレてるお人好しども
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Post-0169

盗賊娘「熊の力は、危ないよ……?」
蛮族娘「熊の力、練習、必要。力、熊の皮、外す、なくなる。盗賊娘、熊の皮、取れる」
盗賊娘「うん、絶対じゃないけど、多分、できるよ」
蛮族娘「盗賊娘、も、勇者。オレ、安心。その前に」
盗賊娘「あれ、これ熊のなめし皮?」
蛮族娘「熊の頭、被る。盗賊娘、お揃い、喜ぶ」
盗賊娘「そうだね、お揃いだね。似合うかな……?」
蛮族娘「完全な、勇者。見とれる」
盗賊娘「えへへ」
蛮族娘「勇者、勇者、止められる。オレ、悪さ、我慢、する。もし、オレ、止める、任せた」
盗賊娘「うん、わかった」

盗賊「ただいま。猫のおもりで木に登る羽目になった」
術士「どうも。そろそろ盗賊娘が帰って……きてるな。お帰り。楽しかったか?」

蛮族娘「ぐらぁーう゛ぁー!」
盗賊「おい、蛮族娘薄く光ってるぞ!?」
盗賊娘「あ、あれ……?」
術士「おい、盗賊娘も光って……こっちに向かってくる!?」

盗賊「おっと、術士は肉弾戦無理なんだ。こっちに来てくれ」
術士「焦点合ってないし目が血走ってるぞ!とりあえず寝かせる!<眠り>!……って寝ないだと!?」
盗賊「おいおい神殿術士レベルの魔法で寝ないのかよ……、って蛮族娘はまだしも盗賊娘が早くて力が強い……!これは厄介だ!」

呪術女「熊の皮、外せ」

盗賊「助かる!」
術士「すれ違いざまに熊の皮を『盗む』。さすが盗賊」

蛮族娘「……。悪さ、我慢する、できなかった」
盗賊娘「……。一瞬目の前が真っ白になって……。わたし、何を……」

呪術女「勇者、の、熊の叫び、は、他、に、伝わる」
盗賊「なるほど、同じ格好してる奴に伝わるんだな……。魔法使いが喜びそうだぜ」
術士「ところで、何故、呪術女が王国領に……?」

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Post-0168

聖騎士女「そろそろ盗賊娘が帰ってくるだろう。身につけている飾りもそろそろ交換時期だ、これを喜んでくれると嬉しいのだが……」

偽聖騎士「違う!違うぞ見習い君!」
聖騎士女「突き抜けるような快活な声だな……」
見習い「いえ、今回も僕は剣術の試験で合格できませんでした。早く帰って一人で素振りしなければ……」
聖騎士女「彼は眩しすぎる、逆効果でなければ良いが……」
偽聖騎士「それは立派だ!しかし!違う!まず悔しい思いに向き合い、存分に悔しがれ!その気持ちを受け止められない人間が強くなっても意味がない!」
見習い「それは貴方が強いから……」
偽聖騎士「強くないし、オレは毎回失敗している!しかし、前を向く前に泣いてわめいて、気持ちを片付けるべきだ!強くても正しくても人の心を踏みにじっては意味がない!」
見習い「あ、あの、手を握らないで……。って、いうか、うぅっ……僕だって、僕だって1年必死で剣を振ってきた……」
偽聖騎士「そうだ!悔しいよな!君も精一杯頑張った!報われなくてもそれは尊い!そして、その積み上げに更に積んで次に続けるんだ!」
見習い「は、はい……。次こそ、次こそ、やってみせます……」
偽聖騎士「オレでよければいつだって練習相手になる!」

聖騎士女「彼はどういう人物なのだ……?」

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Post-0163

戦士「さ、花も手向けたしそろそろ帰るか。柄にもない事をしたせいか、ちょっと疲れたぜ」
盗賊娘「うん、帰ろう。帰ったら酒場でエールを飲んで、たまにサウナにも行くといいよ」
戦士「サウナか、いいな。散々我慢した後に引っかけるエールが最高だよな」
蛮族娘「サウナ?何?」
戦士「あー、なんて言うんだ、あれ。自分を蒸すんだよ」
蛮族娘「蒸す?自分、食べる?愚か?」
戦士「やってる事は我慢大会だから賢くはねえな。が、まあ一回行って見ろよ」
盗賊娘「帰ったら、一緒に行く?」
蛮族娘「試す、良い事。試さず、断る、勇気ない」
盗賊娘「きっと気に入るよ」
戦士「また森で狼呼ぶのか?」
蛮族娘「ううん。もう、狼、仲間。必要ない、呼ぶ、しない」
盗賊娘「そうだね。友達でも用のないときに一杯呼ぶと迷惑だもんね」
戦士「寂しい時に呼ぶのは用があるって言うけどな」

蛮族娘「……?」
盗賊娘「……狼でも、熊でもない気配!」
戦士「お、蛮族娘、熊の皮被るのか?」
蛮族娘「ぐらぁーう゛ぁー!」
盗賊娘「目の錯覚?蛮族娘が薄く光ってる!?」
蛮族娘「ぐらぁーう゛ぁー!」
戦士「斧振り回しながら突っ込んでった……。あれは手負いの猪!でかい!避けろ蛮族娘!」
蛮族娘「ぐらぁーう゛ぁー!」
盗賊娘「あの巨体の突進を前から受け止められるの……嘘……」
戦士「そのまま投げ飛ばして斧で止め。やってる事が熊だぞ」

蛮族娘「ぐらぁーう゛ぁー!」
戦士「こっちむいて突っ込んでくるな……」
盗賊娘「ちょ、ちょっとやめて、蛮族娘!?」
戦士「じゃあちょっと失礼して……おら!」
盗賊娘「受け止めて持ち上げるの……?」
戦士「相撲じゃまだ負けないからな。落ち着け……ないんだな。ちょっと締めるぞ。毛皮が邪魔だ」
蛮族娘「……?苦しい、戦士、やめる、して」
盗賊娘「正気に戻った……」
戦士「あー、毛皮が原因か」
蛮族娘「勇者、熊、力、借りる。熊の勇者、全て、勝つ」
戦士「強いのはめちゃくちゃわかったから、ちょっと使い方考えようぜ」

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Post-0160

聖騎士女「ん……?あそこにいるのは偽聖騎士か……?」

偽聖騎士「待て!少年は確かにパンを盗んだかもしれない!しかし理由を聞かずに殴るのが正しいとオレは思わない!」
少年「ご、ごめんよ。親がいなくなっちゃって、妹が腹を空かせてるんだ……」
パン屋「なら最初から言えよ」
偽聖騎士「金はオレが払おう。少年、行く当てはないのか?」
聖騎士女「失礼する。幸い、教会で孤児を世話しているシスターを知っている。少年が望むなら紹介できるが」
偽聖騎士「おや聖騎士女。キミの紹介なら安心だ」

聖騎士女「あそこにいるのは偽聖騎士……?」

偽聖騎士「貴族とは言え平民を斬るには正当な理由が必要だ!理由なく斬るならオレが代理で相手しよう!」
貴族「聖騎士とは言え逆らうならば容赦せぬぞ!」
偽聖騎士「オレは聖騎士ではない!しかしお相手する!」
聖騎士女「失礼する。私は正式な聖騎士だ。理由なく平民を斬るなら、貴族の論理ではなく神の論理で裁かねばならないが」
貴族「くっ、名に聞く聖騎士女か。命拾いしたな若造」
偽聖騎士「引くなら追わん」
聖騎士女「あなたの戦いを奪ってしまったな」
偽聖騎士「正しい結果が出るなら手段は問わない。キミが加勢してくれて助かった」

聖騎士女「行く先々に偽聖騎士がいるな……。何の巡り合わせだ……?」

偽聖騎士「見つけた!少年の両親を殺したのはお前らだな!これは天誅ではない、人誅だ!抜け!」
聖騎士女「判断が早すぎる。まるで戦士のようだ。この早さで行動されるとフォローが間に合わない……」
偽聖騎士「一閃!命は取らない。懺悔しろ」
聖騎士女「失礼する。官憲に突き出す前に話を聞かせて貰おう」
偽聖騎士「やあ聖騎士女。証人がいてくれると助かる」

聖騎士女「あなたはあまりにも判断が速い。しかし間違っているようにも見えない」
偽聖騎士「それは持っている力の違いだろう。オレは今腕力以外の力を持たない。だから大きな被害も出ない」
聖騎士女「それは、確かにそうかも知れない。私は加護があるが故に、まず被害範囲を考えてしまう」
偽聖騎士「それは責任のある考え方だし、全く悪くない。が、オレはその場で動けるフットワークがある」
聖騎士女「確かに。なるほど、あなたはやはり面白い」
偽聖騎士「ははは、引き続きがんばるよ。では!」

聖騎士女「神は彼にあえて加護を与えないのでは……?」

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Post-0158

戦士「ほら、見えてきた。俺の故郷だ。もう何もねえけど、村の真ん中の神像を飾ってた台座だけ残ってる」
盗賊娘「風の、気持ちいい村、だね……」
戦士「もう村じゃねえけどな」
蛮族娘「この、花?何?」
戦士「ああ、矢車花だな。風の通るところに生えるんだ」

少年「あ、矢車花だ。ねーちゃんに持って行こ!木の実も十分集まった!」
おばさん「あれ、少年。もう木の実集まったのかい?じゃあ焼き菓子焼いてあげようか?」
少年「ありがと!でも今日はねーちゃんに焼いて貰う!」
おばさん「そうかい。転ばないようにね」
少年「うん!あ、ガリ!こっちくんなよ!」
ガリ「はは、ごめんね、邪魔だったかな」
少年「邪魔だよ!俺より重い物を持てるようになってからねーちゃんの所に来いよ!」
ガリ「そうだね、頑張るけど、きっとそうなるからそれまでは見逃してくれないかい?」
少年「だーめ!ガリの作った神像は凄いけど、農民は身体が第一!」
ガリ「ははは、じゃあ今日から頑張るよ。またあとでね」
少年「もう来んな!」
姉「あれ、少年。ガリさんは?」
少年「見なかったよ。はい。木の実」
姉「ふふ。じゃあ、焼き菓子を焼きましょうか」
少年「さんせーい!」

若騎士「なんと、お嬢様を狙って刺客が……」
密偵「はい。縁談を断られた貴族様が、お嬢様がこの村に気分転換にお泊まりになる事を知って刺客を放たれたと」
若騎士「やむを得ない。私だって多少は腕に覚えがある。私がお嬢様を馬の後ろに乗せて急ぎお送りしよう」
密偵「お供します」

おばさん「あ、あれは山賊!なんでこんな貧しい村に……!」
農夫「い、いかん、皆逃げろ……!」

山賊「チンケな村だが女がいようが逃げようが皆殺しにすれば後金が貰える。前金だけで十分だが後金は3倍だ」
山賊「遊んでないで奪うだけ奪って皆殺しにしろ」
山賊「はは、貴族様の依頼はうま味があるな!」
山賊「まず逃げる奴から殺せ」

ガリ「姉!少年!隠れろ!山賊が来てる!逃げられない!」
姉「ガリさん!山賊が……!」
少年「隠れてて助かるわけないだろ!逃げるしか」
ガリ「今だけでいい、いう事を聞け!」
少年「ガリが……俺を、殴った!?」
ガリ「ねえさんと一緒に隠れていろ!僕は、山賊を向こうに誘導する!」
少年「そんな事したらガリは……」
ガリ「君と姉さんは生き延びろ!」
姉「ガリさん……。うん……ありがとう……」
少年「ねーちゃん?」
姉「少年、何があっても声を出さないで。このクローゼットは大人は入れない。だから、見つからない」
少年「ねーちゃん?嫌だよ、やめて、なんでそんなに力が強いの……?」
姉「いいから。お願い。絶対に声を出さないで」
(クローゼットの閉まる音)

姉「ガリさん……。あの声は……。ああ、ガリさん」
少年「ねーちゃん!?泣いてるのか!?」
姉「喋らないで!これから一言も!」

山賊「女か。時間がないから命だけ貰うぜ」
姉「こ、これが全財産です。差し出せるものはこれしかありません。ど、どうか助けて」
山賊「駄目だ」
山賊「家捜しするか?」
山賊「死んだ女が命乞いに全額出したろ。探すだけ無駄だ」
山賊「そうか。まあ火を放つしな」

おばさん「姉!少年!いるなら出てきて!火が回ってる!」
おばさん「ああ、姉ちゃん。なんて可哀想に」
おばさん「そこにいるんだね少年!開けるよ。目を閉じて!」
少年「……」
おばさん「見ないで。山賊が村に火を放ったの。誰もいない方向に逃げるわよ」
少年「おばさんだって血まみれだよ……大けがをしてる」
おばさん「いいの。あなたを助けるまで死なないから。さあ一緒においで」
少年「なんで、騎士様は助けてくれなかったの……?」
おばさん「わからない。考えるのは生き延びてからにしましょう……」

戦士(持ってきた酒を台座にかける)
戦士「ガリとねーちゃんのおかげで今日も生きてるよ……」
蛮族娘(黙って矢車花を台に供える)
盗賊娘「ねえ戦士……?」
戦士「ああごめんな。何か気になるものがあったか?」
盗賊娘「ううん……あんたが気になる」
戦士「ああ、ちょっと感傷に浸ってただけだよ。柄にもないな」
盗賊娘「ううん。誰にだって過去と傷はあるから、おかしくない……」
戦士「そうか」
盗賊娘「でも、戦士が人に寄り添ってくれるように、戦士に寄り添いたい人だって一杯いるよ……?」
戦士「そうか……」
盗賊娘「うん。今言って、っていうんじゃなくて、言いたくなったら言って」
戦士「今の俺と、盗賊娘と蛮族娘がいたら、今もここに村があったんだろうな……。今度、堀のパン屋で甘い物でも食いながら話をしようか。この話にはあの婆さんが必要だ」
盗賊娘「うん……」
蛮族娘「話、聞く。そのあと、焼き菓子、食べる!」
戦士「ああ、そうだな。約束だ」

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Post-0156

戦士「おー。狼どもがついてくる」
盗賊娘「すごいね、心強いね」
蛮族娘「狼、熊、探す。熊、盗賊娘、倒す。一人で熊倒す、盗賊娘、勇者」
戦士「なるほど、タイマンで熊を倒せば勇者なのか。じゃあ俺もう勇者だな」
蛮族娘「勇者、熊の皮、被る、と、勝つ。何にでも」
戦士「熊を倒せる奴は熊より強い、なら誰にも負けない。なるほどなー。でも俺熊に勝てるけどチョイチョイ人間に負けるな」
蛮族娘「油断、愚か、負ける。愚か、勇者、ない」
戦士「馬鹿は勇者じゃない。じゃあ俺は勇者じゃないな」
盗賊娘「あはは」
戦士「いい笑顔だな。でもわかってるか?蛮族娘、今お前を勇者にしようとしてるぞ」
盗賊娘「……あはは。」
戦士「困ってるなら逃げてもいいんだぞ」
狼「ウォーン!」
蛮族娘「熊、番い!雌、オレ、服、変え!オス、盗賊娘!胸、ひと突き!かーうぉーうー!」

戦士「すげえな、正面から一気に攻め込んでる。下払いで立ち上がらせて下から切り上げ。これは動物にはできないな」
蛮族娘「うーららー!」
戦士「オスが突っ込んでくるぞ!俺が受けるか盗賊娘?」
盗賊娘「ううん。まかせて。ごめんね、命と皮を貰うよ……」
戦士「寸前で避けて足を攻撃。立ち上がらせて飛び込み胸を一突き。もう並大抵の相手じゃ俺の出番ないな」
蛮族娘「盗賊娘、勇者!オレ、服、作る!」
盗賊娘「ありがとう……あのね。番いだから子供がいないかな」
戦士「いや、時期じゃないな。が、一応探そう」
蛮族娘「狼、子供、探す」

戦士「どうやら子供はいなかったな。熊肉は大して美味くもねえけど、今日明日分の肉を貰って残りは狼にまかせるか。あと皮だな」
蛮族娘「皮、剥ぐ、できる!」
盗賊娘「わたしもできるよ」
戦士「いよいよ俺いらなかったな」

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Post-0155

剣士「……」
聖騎士女「蜂蜜酒が気に入らない味だったか?……すまん、茶化すのは無理だな。どうしたのだ?」
術士「なんとなく分かるな。今は盗賊娘がいない。話せよ」
剣士「すみません。少し、もしかして私は底が浅いのではないか、と思いまして」
聖騎士女「私はそう思わないが、なぜそう思う?」
術士「むしろお前は誰より考えが深いだろ?」
剣士「いえ。おそらく私は経験が足りない。生まれてから真っ直ぐに神に向かい、なんら躓く事なく来てしまった」
術士「今が躓いていないとでも?」
剣士「躓いていない。自分が信じる正しい道を歩いている。だから、私には失敗の痛みや、傷の痛みを本当の意味で理解できないのではないだろうか?」
聖騎士女「なるほど。失敗や傷がない事が剣士の傷なのだな」
剣士「ない事が傷……?」
術士「盗賊娘の身の上を知って、傷のない自分に彼女を助けられるのかを疑っているのではないか?」
剣士「はい、おそらくそれが最も大きい」
聖騎士女「それだけ彼女が大事なのだろう。そして見ている限り、私には大事にできてように見える」
術士「あとな。転んでないから見えるものってあるんじゃないか?お前はそれを見せればいい」
剣士「そんなものあるのだろうか……?」
術士「お前が転んでないから見えない、と言っている何かがあるように、転んだら見えないものってあるんじゃないか?」
聖騎士女「それに、剣士が何を言っても、私達が見ている剣士は誠実で優しい。盗賊娘には心配してくれる優しい大人がまだ必要だと、私は思う」

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Post-0154

聖騎士女「盗賊娘がいないと、なんというか、風穴が開いたような気持ちになるな」
剣士「そうですね。ただ、まあ、蛮族娘さんと一緒にいるときは本当に子供のように笑う。だから、いいのではないですか?」
術士「お前神殿に仕えてなかったらいいパパになったろうにな」
剣士「はは、あんなに素直な子がいてくれるなら、きっと世の中の親というのは幸せなのだろうな」
術士「そうかね。幸せに生きて神にたどり着く奴もいるし、地獄の中で神にすがるものもいる。思い込みが一番危ないんじゃねえかな」
剣士「す、すまん。あまりにも雑な物言いだった」
術士「いいよ。少なくとも俺は今毎日が楽しい」
聖騎士女「ん……?向こうで騒ぎが起きてる。急ごう」

偽聖騎士「借金のカタに子供を連れて行くなんて、人が許しても神が許さん!抜け!」
悪徳商人「聖騎士の鎧……。しかし加護を撃つ前に畳みかければ!行け手下ども」
手下「うぉー!」
偽聖騎士「オレには加護はない!天誅ではなく人誅だ!」
剣士「凄い技術だ。私とも戦士君とも騎士殿とも違う。膂力を完全に流れで活かしている」
術士「が多勢に無勢だな。偽物みたいだが助けるか?」
聖騎士女「格好ではなく行いで判断すべきだ。が、私一人で十分だ。そこの人、合わせる」
偽聖騎士「ありがたい!オレは左から右へ、キミは逆を頼む。キミは女性だが守る方が失礼だ」
聖騎士女「そのように言ってくれるのは嬉しいな。10手詰みだ。まず1手」
偽聖騎士「お上手。では2手3手」
悪徳商人「聖騎士が2人……。あまりにも強い。お前らはそこで時間を稼げ!」
剣士「ようこそこちらへ。怪我をしない程度に、お相手しましょうか」
術士「こいつはちょっとスネてるんでな。運がなかったな」

偽聖騎士「ふぅ、誰も怪我せず鎮圧できた。協力してくれてありがとう」
聖騎士女「礼には及ばない。失礼だが、その鎧は聖騎士にのみ与えられるもの。あなたも同じく聖騎士という認識で良いか?」
偽聖騎士「いや、オレは加護を与えられていない。だから聖騎士ではない。が、この鎧は死んだ聖騎士から譲られたもの、正式にオレのものだ」
聖騎士女「そうか、失礼した」
偽聖騎士「……怒らないのか?神に認められて初めて身につけられる鎧を、聖騎士でないオレが身につけていて。キミも血のにじむ努力の上で聖騎士になったのだろう?」
聖騎士女「努力したのは私が望んでの事だ。それで誰かを責める権利がある訳でもない。鎧が奪ったものではなく譲られたものであれば責める道理がない」
偽聖騎士「ありがとう。キミのような聖騎士を見たのは初めてだ」
聖騎士女「まあ私も変わり者だからな。それよりも今の詳しい話を聞かせて貰えるだろうか」

偽聖騎士「と言う訳で、あの悪徳商人が無理矢理金を貸しては剥がして子供を連れ去っていた。それを誰もとがめる事ができなかった」
聖騎士女「責めるな。強くない事を怒るのは強者の驕りだ」
偽聖騎士「もちろんだ。だからこその放浪者だ。オレにしかできない事を、今日オレはした」
聖騎士女「立派だ。神ならぬ私にはわからないが、あなたは必要な物を備えていると思う」
偽聖騎士「はは、本物に認めて貰うのはくすぐったいな。だが、オレもいつか加護を得て人を救う本物になるために修行を続けていくよ」
聖騎士女「そうなる事を願っている。もし何かあれば、私達の酒場を訪ねてくれ」
偽聖騎士「ああ、助かるよ。いい女だな」
聖騎士女「真顔でそう言ってくれる人間は初めてかもしれないな」

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