Post-0185

ナンバー1「すまない、取り込み中のようだが失礼してもいいだろうか」
僧侶「ナ、ナンバー1さん……」
ナンバー1「久しいな。息災だったか?」
僧侶「は、はい。しかし、あなたは失意のシスターを再度戦場に送った……」
ナンバー1「人聞きの悪い。確かに頼んだのは私だが強制はしていないし、そもそも私は彼女に対する指揮権を持たない」
僧侶「そ、それはそうですが」
ナンバー1「最も合理的な手段で、最も失敗しない手段だった。実際、部隊にも彼女にも損害は発生していない」
僧侶「しかし……」
ナンバー1「これは私と彼女の問題だ。彼女が不平を漏らすなら対応する。が、君には直接の影響はなかったはずだ」
僧侶「……は、はい。あなたは常に正しい。が、常に最悪だ」
ナンバー1「どちらも褒められたものと受け止めよう。ところで、頼みがあるのだが」
僧侶「私に……ですか?」
ナンバー1「そうだ。聖堂騎士ではなく僧侶の君に頼みがある。私の左足を生やして欲しい」
僧侶「……すみません、<再生>は塞がった傷には効かないんです」
ナンバー1「使えるなら使う意思があるという事だな。なら、報酬はあのシスターの教会を神殿直轄にして公に資金を注入する。これは神殿の総意だ」
僧侶「すみません、今回はお役に立てないんです」
ナンバー1「立てる。見ていろ」
僧侶「!?」
ナンバー1「塞がった足を一寸ほど落とした。さあ<再生>を使ってくれ。さもなければ私は失血する」
僧侶「なんという無茶を……!<再生>!」
ナンバー1「なるほど、<再生>をされると傷口がむずがゆくなるのだな。これは知見だ。あっという間に足が生えるな」
禁術娘「うわー。アレはアタシ達の傷が治るのと一緒だねェ。でもあっちの方がはやいねェ」
禁術複製「俺っち達の治るのはある意味『怪我の拒絶』だからねぃ。治すんじゃなくて『ゆっくり元に戻る』感じだよねぃ」
僧侶「これで十分なはずです」
ナンバー1「ふむ。義足なしで地面を踏めるのは久々だ。これで、一カ所、増えたな」
僧侶「なにが、ですか?」
ナンバー1「まあ、今のところは手足が一カ所増えたと思っておいてくれ」
僧侶「……はい」
ナンバー1「そして僧侶、今面白い事に巻き込まれているね?」

#ズレよし
#ちょっとズレてるお人好しども
#破術争奪戦編

追って加筆修正し、以下まとめサイトに掲載します
https://t.co/4qDFo5YkPa


元ポストはこちら


※収録に当たって多少手直ししているものがあります。

Post-0183

男「助かりました。本当にありがとうございます」
偽聖騎士「良かった。しかし屋外は危ない。一旦酒場に入ろう。迷惑でないといいが」
聖騎士女「この酒場はおそらくこの街の中でも一、二を争うほどに安全だと、私は思う」
偽聖騎士「君がそう言うなら安心だ。お邪魔するよ。さあ君もこっちへ」
男「ありがとうございます」
禁術娘「見てたよ。お仲間、だねェ」
禁術複製「安全というかむしろ蛇の穴かもねぃ」
男「ひっ」
戦士「大丈夫だ、口だけだよ。今のところな」
盗賊「全然大丈夫じゃねえな」
騎士「互いに必殺の術を持つ者が先手を取らない時点で戦う気はないと判断できるな」
術士「大丈夫、魔法だって分かってるなら手の打ちようはいくらでもある。さ、入んな」

男「ありがとうございます。私は王都からこちらに派遣されてきた魔術師です」
聖騎士女「何があったのかを分かる範囲で教えて貰えるだろうか」
魔術師「はい。私や師を含む一門は秘伝の術を使って主に大がかりな治水を行っていました」
禁術娘「……秘伝の術、ねェ……」
魔術師「私達に伝わる術は一点と一点を結びつける術です。単純に言うと、水の湧かない場所と水源を結びつけて水を通す事ができるのです」
盗賊「すげえ術だな」
魔法使い「空間を結ぶには維持コストが必要ですよね。どうやって魔力を供給しているんですか?」
魔術師「私達の術には維持コストが不要なのです」
魔法使い「まさか、ちょっと考えづらいですよね……」
魔術師「私はその最中、この地方の上水と下水のためにこちらに出向してきたのですが、王都では私の一門が次々に殺害されたという知らせがあったのです」
禁術複製「まあ、そうだろうねぃ」
魔術師「そして先日、私以外全員死んだという話を聞いて危険を感じ、身を潜めていたのですが、突然襲われたのです」
禁術娘「良く一撃でやられなかったねェ」
魔術師「実際最初で死ななかったのは偶然です。私が落とし物を拾おうとしてかがんだ瞬間、私の上半身があったところに棘の塊ができました」
禁術娘「悪運があったねェ」
魔術師「そこで位置指定の術だとわかったので、フェイントをかけながら逃げました。しかしどこに逃げても術が追いかけてきて……」
聖騎士女「そこで我々が出会ったわけだな」
魔術師「そうです。あの術でなぜ死ななかったかは私にもわかりません……」
禁術娘「アハハ、ようこそ破術争奪戦へ。アンタの運命は奪って生き残るか、奪われて死ぬか、みんなで降りるかだよ、ねェ」
禁術複製「あれ?みんなって俺っちを入れてくれてる?」
禁術娘「いや、アンタは降りるなら勝手におりな」
魔術師「破術……?」
禁術複製「一門が持っていた術は四門四術の移送門<接続>。悪く使えば心臓を外につなげて血を出したり、体内に深海をつないで爆散できるねぃ」
魔術師「言ってる意味が……?」
禁術娘「お仲間だからね、聞かせてあげるよ。ついでに聞きたい人はいるかい?」
術士「すまん、聖騎士女が関わった以上、ウチから剣士と盗賊娘を呼んでくる。待っててくれるか?」

#ズレよし
#ちょっとズレてるお人好しども
#破術争奪戦編

追って加筆修正し、以下まとめサイトに掲載します
https://t.co/4qDFo5YkPa


元ポストはこちら


※収録に当たって多少手直ししているものがあります。

Post-0181

禁術複製「ありがたいねぃ。俺っちは破術の争奪戦には興味ないんだよねぃ。でも放置すると襲われる」
禁術娘「当たり前だよ、ねェ。誰も知らない破術持ってるんだろ。じゃあ取られる」
禁術複製「そうなんだよねぃ。しかし死なない事には争奪戦から離脱できないし、死んだらおしまいなんだよねぃ」
魔法使い「禁術複製さんが<複写>を知っているなら、自分をコピーして増やせば戦力になるのでは?」
禁術複製「誰だってそう思うよねぃ。<複写>はさ、何でも複写できるけど、人間を複写した時は別途<支配>しないと言う事聞かないよねぃ」
魔法使い「ああ、なるほど」
禁術複製「誰だって思うよねぃ。目の前に本人がいるなら入れ替わっちゃえばいいんだって。だから人間をコピーしたら最初にするのは<支配>だよねぃ」
魔法使い「つまり、増やした分だけ<支配>を維持しないといけない。そうすると増やせば増やすほど維持コストがかかる」
禁術娘「そう、結局増やすところで1人や2人。でも、コピーが<複写>を使えば、そのコストはコピー持ちだよ、ねェ」
禁術複製「残念ながらコピーの魔法コストは本人の空きコスト依存なんだよねぃ。だからオリジナルが消えるまでは俺っちもコストが少なかった」
禁術娘「……今は、コストが開いてて魔法が使える、って言うんだ、ねェ」
禁術複製「身構えないでいいねぃ。どうせどっちも不死、やり合ってる間に横やりが入るのが一番マズいねぃ。やるなら酒場に入る前に酒場ごと消してるねぃ」
禁術娘「で、アタシとまほクン達、どっちに用事なんだい?」
禁術複製「話が戻って助かるねぃ。実際どっちも用があるから一緒にいてくれて助かるねぃ」
騎士「我々にも用がある……だと?」
禁術複製「もちろん。本人から解放してくれたお礼と、あと、お願いがあってねぃ」
騎士「僧侶が言うとおり、話だけは聞こう」
禁術複製「まず妹ちゃんにお話するねぃ。二人で組んで、破術争奪戦から降りよう」
禁術娘「はぁ……?今降りるって言った?」
禁術複製「言ったねぃ。本人は破術を集めていたけど、俺っちはどうでもいいんだねぃ。俺っちレベルの術士が簡単に死ぬなら破術なんて集めてる場合じゃないねぃ。俺っちはまだ死にたくないねぃ。なら、俺っちしか知らない破術を持ったまま争奪戦から離脱したいねぃ」
禁術娘「都合の良い事を……!」
禁術複製「わがままだって言うなら不死は手放してもいいねぃ。いつ襲われて拷問されて奪われて殺されるかがわからない、っていうのは、実際『死なない』とはほど遠いねぃ」
禁術娘「クズだって、あれから何人も奪って殺してきたんだろう……!?」
禁術複製「本人が消えるまではねぃ。でもそれは俺っちが殺そうとしての事じゃない。支配されてやった事だねぃ。それに参加している奴はみんなそれを承知だねぃ」
禁術娘「クズと話す事はないねェ。どこかで野垂れ死にな」
禁術複製「クズって言われると傷つくねぃ。僧侶の人、ちょっと助け船出してくれないかねぃ?」
僧侶「支配が呪いによるものなら、その命令に逆らうのは至難の業ですね。おそらく解除しようとしない事も含めて命令されているでしょうから、打つ手はほぼなかったんじゃないかとは思います」
禁術複製「本当に助かるねぃ。そして本人が<支配>を使える以上、俺っちも<支配>が使えるねぃ。個別で遭遇して初手で<支配>使えば妹ちゃんは言うこと聞くしかなかった。それをしなかった事を評価して欲しいねぃ」
禁術娘「考え方はクズそのものなんだねェ」
禁術複製「まあそのクズの複写だからねぃ。でも俺っちは本人と分かれて別の道を歩いているねぃ」
禁術娘「悪人が更生したっていう自己申告を信じる馬鹿がいるとでも思ってるのかねェ……?」
禁術複製「目覚めた瞬間に『お前は偽物だ』『偽物だと分かるように喋れ』『命令に従って破術を奪って人を殺してこい』って言われて、疑問に思わない人間っているのかねぃ?複写された瞬間は本人と同じかもしれないけど、初手でもう本人とは違う運命なんだよねぃ」
禁術娘「……やっぱり、信じられない。アンタは無表情でアタシを『いじった』クズ本人にしか見えない」
禁術複製「まあ、しょうがないねぃ。ただ、一緒に降りたくなったら言って欲しいねぃ。妹ちゃんは争奪戦嫌いでしょ?」
禁術娘「クズも嫌いだよ」

#ズレよし
#ちょっとズレてるお人好しども
#破術争奪戦編

追って加筆修正し、以下まとめサイトに掲載します!
https://t.co/4qDFo5YkPa


元ポストはこちら


※収録に当たって多少手直ししているものがあります。

Post-0180

戦士「で、結局よくわからねえんだけど、何をどうすればいいんだ?」
禁術娘「アハハ、正直どうすればいいかわかんない、ねェ。実際争奪戦から降りられるなら降りたいんだけど、降りるって事は死ぬって事だ、ねェ」
魔法使い「そうなんですよね。結構条件が複雑なんです」
盗賊「複雑、か」
禁術娘「その術を知る唯一の者は死なない」
魔法使い「あ、禁術娘さん、痛いのに見せなくていいです。みなさん、彼女本当に死にません」
騎士「魔法使いがそういうならそうだな。死なないのだろう」
禁術娘「信じるのかい」
騎士「本当に魔法使いが騙されるのであれば我々が疑っても騙される。死なないというのが真実である方がよほど説得力がある」
禁術娘「術を奪えば知っている者が1人ではなくなり、殺せるようになる、ねェ」
盗賊「奪い合いに参加している以上、殺せるなら殺すな。そうすれば自分が死なないようになる」
魔法使い「そうです。見逃したとしてまた襲いかかってくる恐れがありますから」
僧侶「そうなると、例えば魔法などでその術自体を忘れるというのはどうでしょうか……?」
禁術娘「もちろん試したよ。そういう呪文は効かないんだ。多分唯一知る者がその術を忘れる事で術自体が失われる事を防いでる、ねェ」
僧侶「そうなると、術を知ってしまった時点で脱落ができない……」
魔法使い「そうなんです。だからすべきなのは『誰も殺さずに争奪戦に勝つ』と同時に『争奪戦の結果得られたものを公開する』です」
戦士「……?意味が今ひとつわかんねえ」
術士「つまり、破術争奪戦の主眼は破術の希少性。それを集めて奥義に至り、不死とその奥義で支配者になりたいって事だろ。なら、少なくとも破術と奥義が広まれば希少性がなくなる。そして破術を知る者が増えれば増えるほど不死になる事が難しくなる」
魔法使い「まあ、ただ広めるだけだと無差別攻撃魔法が広がってしまうので、そのあたりを上手くアレンジしたものが広まるのが理想的ですよね」
禁術娘「ま、そういう事、だねェ。ただ、不死に術を吐かせるにはちょっと手荒な事をする必要があるよ、ねェ」
魔法使い「いえ、それについてはあなたのおにいさんが便利魔法の凄い応用を教えてくれたので大丈夫です」
禁術娘「あの、クズが……?」

???「おーう妹ちゃん、お兄様をクズ呼ばわりとは俺っち、ちょっと悲しいねぃ」
全員「!?」
呪術女「あーるるるるるぅあぇー」
戦士「ちょっと痛えぞ」
騎士「前線は前に、他は横に散ってくれ!」
術士「詠唱破棄!<魔力消失>待機!」
魔法使い「禁術娘さん、横に!」
禁術娘「クズが死んだって嘘じゃないか……!」
???「避ける必要ないねぃ」
禁術娘「ナイフを避けない……?って、違うね、アンタ誰だい?」
???「心臓にナイフ刺しながら言う台詞じゃないねぃ。普通死ぬねぃ」
禁術娘「クズは自分の事俺っちなんて言わないんだよ」
???「そりゃそうだ。複写は分かるように名乗れって言われたからねぃ。そろそろナイフ抜いてくれないかねぃ?」
魔法使い「死なないって事は唯一の破術持ちですね」
???「そうだねぃ。特別に教えてあげるよ。<複写>だねぃ。まあオリジナルが消えたから俺っちが不死になったんだけど」
禁術娘「で、何しに来たんだ、クズの模写」
禁術複製「可愛い妹にそう言われると心が痛むねぃ」
禁術娘「散々人で実験しておいてよく言うよ」
禁術複製「やったのはオリジナルで俺っちは別人。偶然同じ記憶を持ってるだけの双子だねぃ」
戦士「いちいち腹立つな」
禁術複製「いやいや、俺っちなにも悪さしてないねぃ。初対面という事で穏便にはいけない感じ?」
僧侶「あまりにも難しい判断ですが、まずお話を伺いましょう」

#ズレよし
#ちょっとズレてるお人好しども
#日常編

追って加筆修正し、以下まとめサイトに掲載します!
https://t.co/4qDFo5YkPa


元ポストはこちら


※収録に当たって多少手直ししているものがあります。

Post-0177

ナンバー1「なるほど、第三王子の件を処理した褒美として、私の右目か左腕か左足を癒やして頂けると。幸いです。では、戦闘能力のために左足を生やして頂けますか?」
??「無論だ。本来高位の術だが君になら惜しくない」
ナンバー1「本来陰の存在である私に高位術士が接触するのは好ましくありませんが、何か特別な計らいを?」
??「冒険者でも高位の術士は存在する。騎士パーティの僧侶に頼めば造作もない」
ナンバー1「僧侶、ですか。まあ彼が断らなければ」
??「まあ確実に果たせるよう手配しよう。彼に直接腕や目も交渉するといい」
ナンバー1「ありがたきご配慮。女を捨てて目も手も足も捨てましたが、よもや取り返せる機会が頂けようとは」
??「良きに計らい給え。ところで、君は不死についてどう思う?」
ナンバー1「不死は負の生命力。神の裏に当たるこの世にあるべきではない存在です。何を信じていようとも、全ての神の信徒は不死を嫌い、不死を滅ぼそうとする。故に教団としては存在を認めない、に尽きると理解しております」
??「では、負の生命力ではない不死がいるとしたら?」
ナンバー1「醜悪な存在ですね。負の生命力は加齢すればするほど力が増す。しかし正の生命力に基づけば加齢すれば加齢するほど能力が落ちる。その前提で不死なのであれば生きれば生きるほど弱まっていく。それは加護ではなく呪いですね」
??「では、加齢を止められれば?」
ナンバー1「加齢を止められるのであれば実質不老。事故や殺害でない限り死なないのですから不死を求める必要はありません」
??「つまり、それさえ避けたい場合は?」
ナンバー1「呪いも加齢停止も魔術によるもの。神殿が関与するものではありませんが、魔術によって加齢なき不死を達成するものが現れたら、それは神に対する冒涜です。滅するべきかと」
??「そうか。だが、それは君のスタンスであって神殿の意向ではないね?」
ナンバー1「無論です。神と神殿が決めた事が最優先です」
??「追って何かを命令する。足を癒やして待機したまえ」
ナンバー1「かしこまりました」

ナンバー1「神殿にクズが発生した時、自浄できなければ未来はない……」

#ズレよし
#ちょっとズレてるお人好しども
#日常編

追って加筆修正し、以下まとめサイトに掲載します!
https://t.co/4qDFo5YkPa


元ポストはこちら


※収録に当たって多少手直ししているものがあります。

Post-0176

シスター「ようこそお越しになりました。神は懺悔をお聞きになります」
元人買い「すみません、戦士殿に言われて伺いました。懺悔室ではなくシスターに話をせよと」
シスター「私で良ければ伺います。子供達、少し別室に行きますね。では、こちらへ」
元人買い「ありがとうございます」

シスター「では、詳しくお話を伺いましょう」
元人買い「はい、実は、私は元々人買いをしていましたが今は引退しております」
シスター「まずは全て伺いますね」
元人買い「ですが自分の娘が貴族に狙われ 〜〜 騎士様のパーティに助けを乞うたのです 〜〜 そして引退して今ここにいます」
シスター「なるほど。では……お覚悟はなされていますね?」
元人買い「お覚悟……?」
猟犬女「人の子供をさらって売っておいて、自分の子供が狙われた時にはうろたえて助けを求める。いい覚悟だな?さらわれた子供の親には助けがなかった。お前は子供を売った金があったから依頼できた。それで、自分の子供だけ助けて引退。いい人気取りか?」
元人買い「え……え……?」
猟犬女「あいつらが助けたのはお前ではなくお前の子供だ。お前は救われていないし許しを得る資格すらない」
元人買い「で、でも引退しました……」
猟犬女「いいか。人殺しはなっちまったら取り返せない。殺したかどうかで言えばもう殺してるんだ。人を売ったのも一緒だ。取り返せないし、売ったかどうかでいえば売ったんだ。それはもう拭えない」
元人買い「そ、そうかもしれませんが……」
猟犬女「ははッ、悪事は手を染めて足を洗う。が、足を洗ったってお前の手は真っ赤なままだ。逃れられない選択だ。だから今のお前に与える許しは、ない」
元人買い「ない……」
猟犬女「まず、お前は、自分が売ってきた子供が、何を考え、何を思い、何を枷にして生きているかを知って貰う必要がある」
元人買い「知る必要……?」
猟犬女「あたしらが殺してきた、お前が売ってきた人間が、実はお前を同じ考えて、感じて、動く存在だって事を、まず理解しろ。その先についてはそこからしか始まらない」
元人買い「……もしかしてシスターは」
猟犬女「あたしの事はどうでもいい。まずお前は5年ウチで下働きをしろ。5年で理解できなかったらお前の人生はそこまでだ。5年以内に理解できれば、その時はその先を教えてやるよ」
元人買い「は……はい……」
猟犬女「残念だったな、優しいシスターじゃなくて」
元人買い「……」
猟犬女「勘違いするな。しばらく子供には一人で近づけない。まず掃除と炊事だ」

シスター「みなさんお待たせしました。この下働きさんが明日からみなさんのお世話を手伝ってくれるそうですよ」
子供ら「わー!よろしくー!」
下働き「よ、よろしくお願いします」
シスター「じゃあ、そろそろご飯の用意をしますね。今日は寒いからシチューにしましょうね」

#ズレよし
#ちょっとズレてるお人好しども
#日常編

追って加筆修正し、以下まとめサイトに掲載します!
https://t.co/4qDFo5YkPa


元ポストはこちら


※収録に当たって多少手直ししているものがあります。

Post-0175

魔法使い「では、詳しいお話を……。っていうか皆さんお酒持ってますね」
僧侶「ただいま戻りました。今日は一つ笑顔を守れたいい日になりました」
戦士「お、お帰り。せっかくだから飲んじまうか。そっちの子はイケる口?」
禁術娘「めちゃくちゃ緊張感ないねェ」
騎士「常に張り詰めているといつか切れるからな。張り詰めずに網を張っておくのが冒険者だ」
禁術娘「アハハ、お見事。せっかくだから、貰おうか、ねェ。禁術娘って呼んでいいよ」
戦士「よろしくな、禁術娘。じゃ、カンパーイ!」
魔法使い「あれ?ああ、あの時ぶりです、呪術女さん」
呪術女「……!?し、失礼、つい、夢中に」
蛮族娘「呪術女、甘い物、大好き。夢中に、なる」
盗賊娘「おいしかったもんね、あのパイ。もう一個食べたかったなぁ……」
看板娘「はいよ!ちょっとお高いよ!なにせ時価だからね!」
術士「あるだけ持ってきてくれ。蛮族娘も呪術女もおかわりいるだろ?そっちの子は?」
看板娘「まいどー!」
禁術娘「……」
盗賊「だから、全員、油断はしてねえって。左手にあるその粉、ろくな効果じゃないんだろ?」
騎士「そこまで我々を試して、何がしたいのだ?もちろん魔法使いが連れてきた客人、可能な限り助力はするが、あまり試されても気分が良いものではない」
禁術娘「わかった。アンタらのその感度なら確かにアタシの兄、禁術使いを倒せる。破術争奪戦でも上位の男をだ」
戦士「禁術使い……?聞いた事ねえ名前だな」
騎士「いや、銀騎士殿が取り調べで答えていた。辺境にいたあの魔術師だな。であれば、我々は倒してない」
禁術娘「……は!?」
盗賊「あの魔術師を倒したのは、お前の横にいるまほクンと、そっちでパイ食ってる呪術女の2人だよ」
禁術娘「二人で……?」
魔法使い「厳密にいうと僕も主戦力じゃないです。主にあっちの呪術女さんのお手柄です」
禁術娘「あそこでパイ食ってる……?隙だらけじゃないか……」
戦士「酒場で飛び道具を投げるのはナシだ」
魔法使い「呪術女さんは歌のプロフェッショナルです。肉弾戦では計れないですよ」
禁術娘「ちょっと、待ってよ、ねェ。クソ下らない破術争奪戦を終わらせる手伝いを頼みたいんだ。誰に頼めばいいんだい……?」
魔法使い「大丈夫です。みんな、協力してくれます」
禁術娘「油断すると破術をぶち込まれるとんでもない依頼なんだよ……?」
魔法使い「頼まれなくても、禁術娘さんのそばにいるならぶち込まれる可能性があるんでしょう?なら、終わらせましょう?」
盗賊娘「ごめんね、詳しく聞かないとなんとも言えないけど、あなたのそばにいる事で誰かが怪我したり死んだりするなら……」
戦士「悪いのはお前じゃなくて、ちょっかいかけてくる奴だよな」
盗賊娘「だから、こう言うよ。『そんな奴はぶっ飛ばせばいい』って」
禁術娘「参った。修羅場くぐってるのはアタシだけじゃないんだ、ねェ。とりあえず、そのパイ貰おうか」
蛮族娘「パイ、美味しい!」
禁術娘「アハハ、落ち着いて甘い物なんて食うの、もういつぶりか覚えていないよ、ねェ……」

#ズレよし
#ちょっとズレてるお人好しども
#日常編

追って加筆修正し、以下まとめサイトに掲載します!
https://t.co/4qDFo5YkPa


元ポストはこちら


※収録に当たって多少手直ししているものがあります。

Post-0174

魔法使い「ただいま、かえりましたー。戦士さんにプレゼントの前に、もう一人お呼びしていいですか……?」
戦士「お前がモジモジするのも大分慣れてきたからな。男の子?女の子?」
魔法使い「あははー。女の子です。禁術娘さん、どうぞー」
禁術娘「どうもこんにちわー。まほクンにナンパされてついてきましたー」
騎士「おっと。魔法使いが……」
魔法使い「あわわ、そうじゃなくて……」
禁術娘「まほクンったら強引で、無理矢理迫ってきて、女の子が決して人に見せないところまで見られちゃって……責任とってもらわないと……」
戦士「魔法使い、そういうのは男らしいっていうのとはちょっと違うと思うぞ」
盗賊「はは……、っと、手のひらに隠してる千枚通しをしまえ。顎から通すと脳に届く」
禁術娘「アハハ、バレちゃった。どれくらいの実力か見てやろうと思ったんだけど、ねェ」
戦士「いや、みんな気づいてたぞ。あまりにも殺気が露骨すぎる」
騎士「しかしそれを見逃す魔法使いでもない。つまり、試すだけのつもりで敵意はないのだろう?」
禁術娘「あー、このレベルが複数なら、あのクズでも舐めてかかればひっくり返るねェ……」
盗賊「あのクズ?」
禁術娘「アタシが殺そうと思っていた兄貴を消してくれたんだから、お詫びに言う事を聞いて貰おうと思って……ねェ?」
騎士「詳しく話して貰えるだろうか……?」
禁術娘「もちろん。雑魚に話すと命の危険を呼ぶが、アンタらなら話しても大丈夫そうだ。なら味方は多い方がいい」

#ズレよし
#ちょっとズレてるお人好しども
#日常編

追って加筆修正し、以下まとめサイトに掲載します!
https://t.co/4qDFo5YkPa


元ポストはこちら


※収録に当たって多少手直ししているものがあります。

Post-0172

戦士「今日は強い酒でも飲むか。二度蒸留した竜殺し、入荷してるって看板娘が言ってたぜ」
僧侶「私はあまり酔いすぎると危険ですから……」
騎士「酒程度で取り乱す僧侶でもあるまい。が、無理には勧めない」
僧侶「ありがとうございます。じゃあ今日はちょっとだけ飲ませて下さい」
戦士「たまにゃあ酒で心を洗うのもいいよな」

幼子「か、返して!それはお父さんの治療費なの……!」

戦士「盗んじゃ駄目なものってあるだろ」
偽聖騎士「人誅!」
泥棒「うがッ!」
戦士「すまんまさか2人同時に足を払うとは思わなかった。折れてねえか?」
偽聖騎士「これは返して貰うよ。そこの幼子、これでいいか?」
幼子「あ、ありがとう」
僧侶「お父さんは、お怪我ですか?ご病気ですか?」
幼子「あ、あの。ずっと咳が止まらなくて、起き上がれないの」
僧侶「良ければ、お父さんに会わせてくれるかな?もしかしたらおじさんが助けになれるかもしれない」
幼子「いいの?」
僧侶「すみません、後で合流しますね」

偽聖騎士「先ほどの人は聖職者かな?神の導きがあったようだ」
戦士「ああ、うちの僧侶だよ。いい足払いだったな」
偽聖騎士「君には及ばない。相当な手練れだと見たが?」
戦士「お、手合わせかい?」
偽聖騎士「いや、やめておく。勝てないとは言わないが、決着がつくまでに相当疲れるだろう。余裕のない時に助けを求められるのは避けたい」
戦士「あー、そういうタイプか。似てる感じで凄えいい女を知ってるよ」
偽聖騎士「それはとても興味があるな。オレは偽聖騎士、キミの名前を教えてくれるか?」
戦士「戦士って呼んでくれ。よくある名前だから、風泣き村の戦士、でもいいよ」
偽聖騎士「戦士君か。覚えておくよ。では!」

#ズレよし
#ちょっとズレてるお人好しども
#日常編

追って加筆修正し、以下まとめサイトに掲載します!
https://t.co/4qDFo5YkPa


元ポストはこちら


※収録に当たって多少手直ししているものがあります。

Post-0166

戦士「よう、ただいま。無縁墓地か。穴を掘ればいいか?」
騎士「話が早くて助かる」
僧侶「すみません、故郷の帰りにこんなお願いを」
戦士「いや、いいよ。騎士も運ぶのに疲れてるだろうし、僧侶には祈りの仕事があるだろ」
僧侶「すみません、今日は私も穴を掘ります」
戦士「わかった。聞かねえ。ほらシャベルだ。普段使わないだろうから背筋痛めるなよ」
騎士「私も手伝おう。しかし、戦士は何故穴掘りも得意なのだ?」
戦士「傭兵時代に散々塹壕掘ったからな。投石機で飛んでくる石は地面より下に隠れないと駄目だからな」
騎士「なるほど、塹壕か。それは掘った事がないな。師の黒騎士殿は経験があると言っていた記憶がある」
戦士「面白い騎士様だな。塹壕掘るのなんて下っ端の仕事なのにな」
騎士「善い方だ。誰に対しても分け隔てなく接し、そして考えが深い。いつか戦士達を紹介したいと思っていた」
戦士「はは、騎士が尊敬する人なら悪い人のわけがねえな。堅苦しい場じゃなきゃいつでも歓迎だぜ」
僧侶「私もそのように思慮深ければ……」
騎士「自分を責める前に穴を掘れ。そして、後悔によって事実を変えては駄目だ」
戦士「なにがあったのか知らねえけど、自分を変えるのは難しいし、人を変えるのはそれより難しいと思うぞ」
僧侶「今の私は、僧侶でも聖堂騎士でもなく、泣きながら穴を掘る一人の男に過ぎません」
戦士「男だって泣いていいんだからな。ただ、誰かがお前を泣かせたんなら俺はそいつを殴る。だからお前を殴らせるな」

#ズレよし
#ちょっとズレてるお人好しども
#日常編

追って加筆修正し、以下まとめサイトに掲載します!
https://t.co/4qDFo5YkPa


元ポストはこちら


※収録に当たって多少手直ししているものがあります。