Post-0191

禁術娘「さて。この男、不死を奪ったとしても、破術自体は持っている、ねェ。詠唱破棄できるなら拘束もあまり意味がない、ねェ」
禁術複製「じゃあ、魔法使いの人が来る前に処しちゃうかねぃ?」
術士「駄目だな、俺たちがもういる」
剣士「つまり、詠唱破棄すらさせなければいいのだろう?私に任せてくれ。身体か魔力かが動いた瞬間に意識を刈り取る」
禁術娘「刈り取る……?何者……?」
術士「あー、俺が知る中で世界で一番技術の高い剣士だよ。総合力で並ぶ者はいるが技術で並ぶ者は見た事がないな」
盗賊娘「うん、剣士さんが任せろ、というなら、それはもう大丈夫だよ。私でも1秒で意識を落とさせる事ができるから、剣士さんなら本当に一瞬だよ」
剣士「あまり褒めてくれるな。慢心してしまう」
術士「そういう堅苦しい奴だから油断もしねえしな」
盗賊娘「……うふふ」
禁術娘「……なんか毒を抜かれちまった、ねェ。アンタらみんなこんな感じなのかい?」
術士「みんな気負う必要がないくらいには鍛錬してるしな。が、それはあんたらも一緒だ。死なないのに何をそんなにカリカリしてるんだ?」
禁術複製「本当に死なないならねぃ。殺す方法が確立してる不死なんて不死じゃないねぃ」
禁術娘「……そうなんだよね。アタシらは人と違って寿命で死なない。争奪戦に敗れ、拷問され、術式を吐かされて死ぬ、しか死に方が選べないんだよ、ねェ」
盗賊娘「……そうなんだ。きっと、戦士さんなら『望まない運命を押しつけてくる奴なんてぶん殴られて当然だ』って言うよ」
禁術娘「あの馬鹿っぽいのが?」
剣士「ははは!彼は真っ直ぐだが、だからこそ最短距離で答えにたどり着く。実際、君もその運命についてそう思っているのでは?」
禁術娘「……そうかも、ね」

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Post-0189

魔法使い「では、不死ではなくなったところで建設的な話し合いをしませんか」
破術使い「そ、その前に他の奴らをどかしてくれ。この男もこの女も破術使いなんだろ」
魔法使い「ええ、ちょっと下がって頂けますか、禁術娘さん、禁術複製さん?」
禁術娘「いいけど、ねェ」
禁術複製「まあ、口車に乗らないようにねぃ」
魔法使い「これでいいですか?」
破術使い「もちろん。いいに、決まってる!<伸縮>!」
盗賊「おお、手を伸ばして酒場の外の物を掴んで、手を縮ませるのか。一瞬で移動できるな」
禁術娘「やっぱり、ねェ」
禁術複製「そうなるよ、ねぃ」

破術使い「やったぞ!って、何故女と男がここにいるんだ!?」
禁術娘「移動先の空気とアタシを入れ替えたんだよ、ねェ」
禁術複製「はは、術を複製させて貰ったねぃ。もう馬鹿の人しか<伸縮>が使えないわけじゃない。今度こそ本当に不死じゃないねぃ」
破術使い「くそ、くそッ!」
禁術娘「この段階まで生きてる奴が破術を一つしか持っていないわけがない、ねェ」
禁術複製「この段階まで生きてる奴が破術を一つしか持っていないわけがないねぃ」
禁術娘・禁術複製「……」

ナンバー1「不死の気配が1人分減った。あまりその術を広めて欲しくないのだが……」

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Post-0188:

偽聖騎士「オレは外を見てくるよ。まあ見る必要もないとは思うが。ちょっとマントを持って行く」

偽聖騎士「これは、酷いな。ほぼ原型を留めていない。可哀想だが人を殺そうとするという事はそういう事だ。せめてマントで隠してやろう」
偽聖騎士「ん……?関節が動いて……?そうか、これでも死なないのか。そしてゆっくり治っていく……」
偽聖騎士「すまない、見世物にするのは心苦しい。運ばせて貰うぞ。よいしょっと」

偽聖騎士「彼を連れてきた。治るまでにはしばらくかかるだろう。話を聞くなら僧侶君に治して貰いたいのだが」
禁術娘「はぁ、はぁ。放っておいてもゆっくり治るよ。治してやる必要なんてない」
偽聖騎士「しかし感じないで良い苦痛があるなら助けてやるべきでは?」
禁術娘「今まさにアタシがこのクソ野郎に感じないで良い苦痛を貰ったよ、ねェ」
偽聖騎士「その報いは今受けている。殺すなら少ない苦痛で殺すべきだし、助けるなら早く助けるべきだ」
禁術娘「クソ熱い奴だねェ……。嫌いじゃないんだけど、近くにいて欲しくない、ねェ」
偽聖騎士「それは済まなかった」
禁術複製「で、この襲撃者の人はどうするんだねぃ?魔法使い先生」
魔法使い「先生じゃないですけどね……。呪術女さん、この人が魔法を使えないように歌って貰えますか?」
呪術女「無論。あーるるぅあぇー」
魔法使い「じゃあ、オリジナルの人からヒントを貰った、便利魔法の悪い使い方をしましょう。僧侶さん、治して貰って大丈夫です。戦士さんは暴れたら取り押さえてください」
戦士「おうよ」
僧侶「わかりました。<治癒>」
魔法使い「では、僕とあなただけに、<対話>。持っている破術の情報、思い出してくださいね!」
破術使い「四門四術の創造門<創造>」
魔法使い「四門四術の移送門<整地>」
破術使い「……!くそッ、思考を読まれた……!しかし俺の<創造>を奪われたが、お前の<整地>を貰った!」
魔法使い「そう、これで二人とも不死ではありませんね……」
破術使い「ま、待て。話をしよう」
魔術師「仲間を散々殺しておいて、自分だけ死にたくないだと!?ふざけるな、<接続>で体内を深海につなげてやる!」
盗賊「ちょっとごめんよ」
魔術師「うっ……(倒れる)」
盗賊「ヤバい術持ち多いんだよ……」

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Post-0187:

禁術娘「アハハ、まほクン、痛いよ、ねェ。早く、棘を、消して」
魔法使い「棘を消しながら治さないと、大量に血が出ます」
禁術娘「出ても死なないよ。早く、消して」
魔法使い「僧侶さん、お願いします。凱旋の歌に合わせて、一、二、三。<消滅>」
僧侶「<治癒>」
聖騎士女「本当に連携が上手い。惚れ惚れするな」
禁術複製「じゃあ俺っちは……」
魔法使い「あなたは動かないでください」
禁術複製「俺っちなら楽勝で情報を抜けるねぃ」
魔法使い「知ってます。<複写>で本人を増やした後で<支配>するんでしょう?駄目です」
禁術複製「手っ取り早いんだけどねぃ」
盗賊「それで増やした奴をどうするんだよ?」
禁術複製「まあ、いなくなってもらうねぃ」
魔法使い「複製された人だって人間です。それを殺すなら殺人だ。殺さずに勝つのが最低条件です」
禁術複製「っと、それは、俺っちを人間として認めてくれるって事?」
魔法使い「当たり前じゃないですか」
禁術複製「こっちは君の事わりと好きだねぃ」
魔法使い「あはは、オリジナルにも言われました」

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Post-0186

ナンバー1「そして僧侶、今面白い事に巻き込まれているね?」
僧侶「まあ、確かにそうです」
ナンバー1「匂いで分かる。定命の定めに逆らっている者がこの場に3人、そして近くに1人いる」
禁術娘「……!」
禁術複製「妹ちゃん、駄目だ。この女に手を出したら、終わるねぃ。見なよ、上半身を揺らしてる。片目だから距離感ないのを、頭の位置を変えて見てるねぃ」
ナンバー1「ほう。わかるか」
禁術複製「三角測量だねぃ。実践でやってる奴は初めて見たねぃ」
ナンバー1「まあ種が割れて困るような手品でもない。君と君が不死だね?」
禁術娘「……!なんで、わかるん、だい?」
ナンバー1「人は無意識に心臓を守ろうとする。が、君らにはその動作がない。つまり、心臓がどうでもいいくらいに死なない事に慣れている。もう一人は心臓を守っているな。まだ不死になって短いか」
禁術娘「……くそっ」
ナンバー1「まあそれはどうでもいい。懺悔して、神に死を賜るか?私にはできるが」
禁術複製「冗談じゃないねぃ。生まれたばっかり、自由になったばっかりで死なんか賜ってられないねぃ。それに神の術でも死ねるとは思わないねぃ」
ナンバー1「そうか、なら構わないが」(一息に踏み込み、抜いた剣で二人の心臓を串刺しにする)
禁術複製「ぐっ!」
禁術娘「ぎゃっ!」
ナンバー1「この足なら踏み込みも十分だ。そして、本当に2人とも心臓を貫いても死なない。不死か……」
僧侶「何という事を……!」
ナンバー1「死なないのだから構うまい。神の摂理には反するが、実際に存在し、そして負の生命でない以上特段対処の必要もないな」
戦士「一応そいつら、俺らのお客さんだからよ、これ以上暴れるのはやめて貰えるか?」
ナンバー1「失礼した。では、後ろの一人には手を出さないでおこう。対処は任せた。私は自分の身を守れるからご自由に」
破術使い「破ァ!<魔力遮断>があるなら越えてから使えばいいんだよ!<呪禁の棘>!」
禁術娘「まほクン、遮断するな!オイタはいけない、ねェ。」
魔法使い「禁術娘さん……!」
禁術娘「アハハ、アタシは不死なんで、ねェ。痛くても根性があれば術は使える。破術持ち複数相手に突撃なんて馬鹿のする事だよ。<置換>」
戦士「それは根性と違うだろ……」
盗賊「敵の姿が消えた!?」
外の声「人が降ってきたぞー!むごい、ぐしゃぐしゃだ」
禁術娘「アハハ、空高くの空気と入れ替えてやった。奴が治るまでかなり時間がかかるねェ。奴が治る前にまほクンと僧侶さん、アタシから棘を消してくれる……?」
魔法使い「わかりました!でも、そういうやり方、やめて下さい。心が痛みます……」
禁術複製「でもまあ、こういう戦い方できると強いんだよねぃ。どんな奴でも痛みは避けようとする。そこで止まらない奴は一歩先を行けるんだよねぃ」
魔法使い「あなたは、黙っていて下さい。あなたまで嫌いになりそうだ」
禁術娘「まほクンに嫌われちゃったか、ねェ……」
魔法使い「そんな事ないです。僕が言ってるのはオリジナルに加えて禁術複製さんも、という意味です」

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Post-0185

ナンバー1「すまない、取り込み中のようだが失礼してもいいだろうか」
僧侶「ナ、ナンバー1さん……」
ナンバー1「久しいな。息災だったか?」
僧侶「は、はい。しかし、あなたは失意のシスターを再度戦場に送った……」
ナンバー1「人聞きの悪い。確かに頼んだのは私だが強制はしていないし、そもそも私は彼女に対する指揮権を持たない」
僧侶「そ、それはそうですが」
ナンバー1「最も合理的な手段で、最も失敗しない手段だった。実際、部隊にも彼女にも損害は発生していない」
僧侶「しかし……」
ナンバー1「これは私と彼女の問題だ。彼女が不平を漏らすなら対応する。が、君には直接の影響はなかったはずだ」
僧侶「……は、はい。あなたは常に正しい。が、常に最悪だ」
ナンバー1「どちらも褒められたものと受け止めよう。ところで、頼みがあるのだが」
僧侶「私に……ですか?」
ナンバー1「そうだ。聖堂騎士ではなく僧侶の君に頼みがある。私の左足を生やして欲しい」
僧侶「……すみません、<再生>は塞がった傷には効かないんです」
ナンバー1「使えるなら使う意思があるという事だな。なら、報酬はあのシスターの教会を神殿直轄にして公に資金を注入する。これは神殿の総意だ」
僧侶「すみません、今回はお役に立てないんです」
ナンバー1「立てる。見ていろ」
僧侶「!?」
ナンバー1「塞がった足を一寸ほど落とした。さあ<再生>を使ってくれ。さもなければ私は失血する」
僧侶「なんという無茶を……!<再生>!」
ナンバー1「なるほど、<再生>をされると傷口がむずがゆくなるのだな。これは知見だ。あっという間に足が生えるな」
禁術娘「うわー。アレはアタシ達の傷が治るのと一緒だねェ。でもあっちの方がはやいねェ」
禁術複製「俺っち達の治るのはある意味『怪我の拒絶』だからねぃ。治すんじゃなくて『ゆっくり元に戻る』感じだよねぃ」
僧侶「これで十分なはずです」
ナンバー1「ふむ。義足なしで地面を踏めるのは久々だ。これで、一カ所、増えたな」
僧侶「なにが、ですか?」
ナンバー1「まあ、今のところは手足が一カ所増えたと思っておいてくれ」
僧侶「……はい」
ナンバー1「そして僧侶、今面白い事に巻き込まれているね?」

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Post-0184

術士「じゃあ剣士と盗賊娘を呼んでくるよ。あの二人は魔法の知識はないが頭が切れる。絶対に役に立つ」
聖騎士女「頼めるか。敵が外を見張っている可能性が高い、魔法のエキスパートが動いてくれるのは助かる」
偽聖騎士「なるほど、彼が君のパーティの一員か。頼れそうだ」
術士「聖騎士女やまほクンみたいに天才じゃねえけどな。じゃあ行ってくる」
術士「出た瞬間かよ……<魔力遮断>!棘がデカくなる前に魔力を防げばおもちゃができるだけだな」
盗賊「ヒュー、やるねぇ。目はアレだな。ほらよ」
術士「盗賊、投げナイフは聖騎士女と同じくらい上手いな」
盗賊「あの天才に並ばせて貰えるなんて光栄だね」
術士「はっは。じゃあ適当にあしらいながら行くが、まほクン、分かるな?」
魔法使い「まほクンはやめて下さい……。分かりますよ。次は酒場の中に巨大な棘を生成しますよね」
術士「多分、な。方法は見せたぞ」
魔法使い「わかりました。お気を付けて」
術士「はっは。まあこういう時は一人の方がやりやすいからな」
魔法使い「方向は分かっているので、先に打ちましょう。<魔力遮断>!」

禁術娘「手慣れてるねェ……」
禁術複製「俺っちと考え方が一緒だねぃ。これは正面からやると危ないねぃ。本人が油断してなくてもひっくり返るねぃ」
魔法使い「慣れてなんかいないですよ。こんなの慣れない方がいい」
禁術複製「そりゃそうだねぃ」
魔術師「あ、あなたたち何者なんですか……?」
盗賊「それをまとめて話すために人を呼んでるんだ。ちょっと待ってくれ」
聖騎士女「大丈夫、今ここは恐らくこの地方で最も安全な場所だ」

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Post-0183

男「助かりました。本当にありがとうございます」
偽聖騎士「良かった。しかし屋外は危ない。一旦酒場に入ろう。迷惑でないといいが」
聖騎士女「この酒場はおそらくこの街の中でも一、二を争うほどに安全だと、私は思う」
偽聖騎士「君がそう言うなら安心だ。お邪魔するよ。さあ君もこっちへ」
男「ありがとうございます」
禁術娘「見てたよ。お仲間、だねェ」
禁術複製「安全というかむしろ蛇の穴かもねぃ」
男「ひっ」
戦士「大丈夫だ、口だけだよ。今のところな」
盗賊「全然大丈夫じゃねえな」
騎士「互いに必殺の術を持つ者が先手を取らない時点で戦う気はないと判断できるな」
術士「大丈夫、魔法だって分かってるなら手の打ちようはいくらでもある。さ、入んな」

男「ありがとうございます。私は王都からこちらに派遣されてきた魔術師です」
聖騎士女「何があったのかを分かる範囲で教えて貰えるだろうか」
魔術師「はい。私や師を含む一門は秘伝の術を使って主に大がかりな治水を行っていました」
禁術娘「……秘伝の術、ねェ……」
魔術師「私達に伝わる術は一点と一点を結びつける術です。単純に言うと、水の湧かない場所と水源を結びつけて水を通す事ができるのです」
盗賊「すげえ術だな」
魔法使い「空間を結ぶには維持コストが必要ですよね。どうやって魔力を供給しているんですか?」
魔術師「私達の術には維持コストが不要なのです」
魔法使い「まさか、ちょっと考えづらいですよね……」
魔術師「私はその最中、この地方の上水と下水のためにこちらに出向してきたのですが、王都では私の一門が次々に殺害されたという知らせがあったのです」
禁術複製「まあ、そうだろうねぃ」
魔術師「そして先日、私以外全員死んだという話を聞いて危険を感じ、身を潜めていたのですが、突然襲われたのです」
禁術娘「良く一撃でやられなかったねェ」
魔術師「実際最初で死ななかったのは偶然です。私が落とし物を拾おうとしてかがんだ瞬間、私の上半身があったところに棘の塊ができました」
禁術娘「悪運があったねェ」
魔術師「そこで位置指定の術だとわかったので、フェイントをかけながら逃げました。しかしどこに逃げても術が追いかけてきて……」
聖騎士女「そこで我々が出会ったわけだな」
魔術師「そうです。あの術でなぜ死ななかったかは私にもわかりません……」
禁術娘「アハハ、ようこそ破術争奪戦へ。アンタの運命は奪って生き残るか、奪われて死ぬか、みんなで降りるかだよ、ねェ」
禁術複製「あれ?みんなって俺っちを入れてくれてる?」
禁術娘「いや、アンタは降りるなら勝手におりな」
魔術師「破術……?」
禁術複製「一門が持っていた術は四門四術の移送門<接続>。悪く使えば心臓を外につなげて血を出したり、体内に深海をつないで爆散できるねぃ」
魔術師「言ってる意味が……?」
禁術娘「お仲間だからね、聞かせてあげるよ。ついでに聞きたい人はいるかい?」
術士「すまん、聖騎士女が関わった以上、ウチから剣士と盗賊娘を呼んでくる。待っててくれるか?」

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Post-0182

聖騎士女「すまない、失礼する。僧侶と魔法使いはいるだろうか。訳を聞かずまず助けて欲しい」
禁術娘「……?」
聖騎士女「……!?禁術使い……!動くな!動けば斬る!」
禁術複製「両手をあげるから勘弁して欲しいねぃ。まあ詠唱破棄できるから手を上げてても魔法は使えるんだけどねぃ」
聖騎士女「それを言って斬られる可能性もあるのにそれを言う判断ができるなら迂闊な事はしないな。しばらく手をあげていてくれ」
禁術複製「ありがたいねぃ。知らない美人さんだけど身のこなしが洒落にならないから事を構えたくないねぃ」
聖騎士女「すまない、僧侶と魔法使い、助けて欲しい相手は酒場に入って来られないので表に出て貰えるだろうか?」
僧侶「あ、はい。もちろん」
魔法使い「すみません、禁術娘さん、ちょっと出ますね」
戦士「禁術複製は見張っておくな。ただ死なねーなら、何やっても逃げられるかもな」
魔法使い「あはは、そもそも熟練の魔法使いなら詠唱破棄で<転送>使って逃げるので何しても無駄ですね」
盗賊「そんな事ができるのか……」
魔法使い「盗賊さんが詠唱破棄で<転送>使えるようになったら誰より先に探知して逃げられるので洒落にならないですね」
盗賊「はは、これから魔法を覚えてそこまで磨く前に寿命が来るな」
魔法使い「あはは、じゃあちょっと行ってきます」

偽聖騎士「すまない、この人を助けてくれる僧侶君と魔法使い君か。恩に着る」
男「あああああ!あああああ!棘を、消して、くれ!」
僧侶「酷い……。致命傷です。助からない……」
魔法使い「こんな、ひどい。これは、魔法ですか……?」
聖騎士女「明らかに致命傷だが、彼はずっと死なないで今に至る。棘を<消滅>させつつ<治癒>をかけて貰えないだろうか?」
僧侶「なるほど、それなら。助かる可能性があるなら何でもします」
魔法使い「つまり、内側から<消滅>させながら<治癒>するという事ですね。先に外を消すと失血で死にます……」
偽聖騎士「そうするのか。頼む」
魔法使い「ですが、中が見えない以上<消滅>で内臓が削れます。<治癒>が間に合っても相当痛いですよ」
聖騎士女「見ての通り彼は既に地獄の悶絶の中だ。多少痛みを増しても最終的に消える方が良いはずだ」
偽聖騎士「彼は錯乱していて判断ができない。が、叫んでいるように棘を消して欲しいと望んでいる。俺からも頼む」
魔法使い「わかりました。じゃあ、僧侶さん、息を合わせましょう。凱旋の歌のリズムで1、2、3、<消滅>!」
僧侶「<治癒>!」
偽聖騎士「凄い連携だ……」
聖騎士女「王国広しと言えど、この連携ができる高位の術者は両手の指で数えられるだろうな」
偽聖騎士「君がこの酒場を選んだ理由がわかるよ」
僧侶「さぁ、傷は癒えました。もう痛みはないですか……?」
男「た、助かった……。ありがとう。本当にありがとう」

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Post-0181

禁術複製「ありがたいねぃ。俺っちは破術の争奪戦には興味ないんだよねぃ。でも放置すると襲われる」
禁術娘「当たり前だよ、ねェ。誰も知らない破術持ってるんだろ。じゃあ取られる」
禁術複製「そうなんだよねぃ。しかし死なない事には争奪戦から離脱できないし、死んだらおしまいなんだよねぃ」
魔法使い「禁術複製さんが<複写>を知っているなら、自分をコピーして増やせば戦力になるのでは?」
禁術複製「誰だってそう思うよねぃ。<複写>はさ、何でも複写できるけど、人間を複写した時は別途<支配>しないと言う事聞かないよねぃ」
魔法使い「ああ、なるほど」
禁術複製「誰だって思うよねぃ。目の前に本人がいるなら入れ替わっちゃえばいいんだって。だから人間をコピーしたら最初にするのは<支配>だよねぃ」
魔法使い「つまり、増やした分だけ<支配>を維持しないといけない。そうすると増やせば増やすほど維持コストがかかる」
禁術娘「そう、結局増やすところで1人や2人。でも、コピーが<複写>を使えば、そのコストはコピー持ちだよ、ねェ」
禁術複製「残念ながらコピーの魔法コストは本人の空きコスト依存なんだよねぃ。だからオリジナルが消えるまでは俺っちもコストが少なかった」
禁術娘「……今は、コストが開いてて魔法が使える、って言うんだ、ねェ」
禁術複製「身構えないでいいねぃ。どうせどっちも不死、やり合ってる間に横やりが入るのが一番マズいねぃ。やるなら酒場に入る前に酒場ごと消してるねぃ」
禁術娘「で、アタシとまほクン達、どっちに用事なんだい?」
禁術複製「話が戻って助かるねぃ。実際どっちも用があるから一緒にいてくれて助かるねぃ」
騎士「我々にも用がある……だと?」
禁術複製「もちろん。本人から解放してくれたお礼と、あと、お願いがあってねぃ」
騎士「僧侶が言うとおり、話だけは聞こう」
禁術複製「まず妹ちゃんにお話するねぃ。二人で組んで、破術争奪戦から降りよう」
禁術娘「はぁ……?今降りるって言った?」
禁術複製「言ったねぃ。本人は破術を集めていたけど、俺っちはどうでもいいんだねぃ。俺っちレベルの術士が簡単に死ぬなら破術なんて集めてる場合じゃないねぃ。俺っちはまだ死にたくないねぃ。なら、俺っちしか知らない破術を持ったまま争奪戦から離脱したいねぃ」
禁術娘「都合の良い事を……!」
禁術複製「わがままだって言うなら不死は手放してもいいねぃ。いつ襲われて拷問されて奪われて殺されるかがわからない、っていうのは、実際『死なない』とはほど遠いねぃ」
禁術娘「クズだって、あれから何人も奪って殺してきたんだろう……!?」
禁術複製「本人が消えるまではねぃ。でもそれは俺っちが殺そうとしての事じゃない。支配されてやった事だねぃ。それに参加している奴はみんなそれを承知だねぃ」
禁術娘「クズと話す事はないねェ。どこかで野垂れ死にな」
禁術複製「クズって言われると傷つくねぃ。僧侶の人、ちょっと助け船出してくれないかねぃ?」
僧侶「支配が呪いによるものなら、その命令に逆らうのは至難の業ですね。おそらく解除しようとしない事も含めて命令されているでしょうから、打つ手はほぼなかったんじゃないかとは思います」
禁術複製「本当に助かるねぃ。そして本人が<支配>を使える以上、俺っちも<支配>が使えるねぃ。個別で遭遇して初手で<支配>使えば妹ちゃんは言うこと聞くしかなかった。それをしなかった事を評価して欲しいねぃ」
禁術娘「考え方はクズそのものなんだねェ」
禁術複製「まあそのクズの複写だからねぃ。でも俺っちは本人と分かれて別の道を歩いているねぃ」
禁術娘「悪人が更生したっていう自己申告を信じる馬鹿がいるとでも思ってるのかねェ……?」
禁術複製「目覚めた瞬間に『お前は偽物だ』『偽物だと分かるように喋れ』『命令に従って破術を奪って人を殺してこい』って言われて、疑問に思わない人間っているのかねぃ?複写された瞬間は本人と同じかもしれないけど、初手でもう本人とは違う運命なんだよねぃ」
禁術娘「……やっぱり、信じられない。アンタは無表情でアタシを『いじった』クズ本人にしか見えない」
禁術複製「まあ、しょうがないねぃ。ただ、一緒に降りたくなったら言って欲しいねぃ。妹ちゃんは争奪戦嫌いでしょ?」
禁術娘「クズも嫌いだよ」

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