Post-0186

ナンバー1「そして僧侶、今面白い事に巻き込まれているね?」
僧侶「まあ、確かにそうです」
ナンバー1「匂いで分かる。定命の定めに逆らっている者がこの場に3人、そして近くに1人いる」
禁術娘「……!」
禁術複製「妹ちゃん、駄目だ。この女に手を出したら、終わるねぃ。見なよ、上半身を揺らしてる。片目だから距離感ないのを、頭の位置を変えて見てるねぃ」
ナンバー1「ほう。わかるか」
禁術複製「三角測量だねぃ。実践でやってる奴は初めて見たねぃ」
ナンバー1「まあ種が割れて困るような手品でもない。君と君が不死だね?」
禁術娘「……!なんで、わかるん、だい?」
ナンバー1「人は無意識に心臓を守ろうとする。が、君らにはその動作がない。つまり、心臓がどうでもいいくらいに死なない事に慣れている。もう一人は心臓を守っているな。まだ不死になって短いか」
禁術娘「……くそっ」
ナンバー1「まあそれはどうでもいい。懺悔して、神に死を賜るか?私にはできるが」
禁術複製「冗談じゃないねぃ。生まれたばっかり、自由になったばっかりで死なんか賜ってられないねぃ。それに神の術でも死ねるとは思わないねぃ」
ナンバー1「そうか、なら構わないが」(一息に踏み込み、抜いた剣で二人の心臓を串刺しにする)
禁術複製「ぐっ!」
禁術娘「ぎゃっ!」
ナンバー1「この足なら踏み込みも十分だ。そして、本当に2人とも心臓を貫いても死なない。不死か……」
僧侶「何という事を……!」
ナンバー1「死なないのだから構うまい。神の摂理には反するが、実際に存在し、そして負の生命でない以上特段対処の必要もないな」
戦士「一応そいつら、俺らのお客さんだからよ、これ以上暴れるのはやめて貰えるか?」
ナンバー1「失礼した。では、後ろの一人には手を出さないでおこう。対処は任せた。私は自分の身を守れるからご自由に」
破術使い「破ァ!<魔力遮断>があるなら越えてから使えばいいんだよ!<呪禁の棘>!」
禁術娘「まほクン、遮断するな!オイタはいけない、ねェ。」
魔法使い「禁術娘さん……!」
禁術娘「アハハ、アタシは不死なんで、ねェ。痛くても根性があれば術は使える。破術持ち複数相手に突撃なんて馬鹿のする事だよ。<置換>」
戦士「それは根性と違うだろ……」
盗賊「敵の姿が消えた!?」
外の声「人が降ってきたぞー!むごい、ぐしゃぐしゃだ」
禁術娘「アハハ、空高くの空気と入れ替えてやった。奴が治るまでかなり時間がかかるねェ。奴が治る前にまほクンと僧侶さん、アタシから棘を消してくれる……?」
魔法使い「わかりました!でも、そういうやり方、やめて下さい。心が痛みます……」
禁術複製「でもまあ、こういう戦い方できると強いんだよねぃ。どんな奴でも痛みは避けようとする。そこで止まらない奴は一歩先を行けるんだよねぃ」
魔法使い「あなたは、黙っていて下さい。あなたまで嫌いになりそうだ」
禁術娘「まほクンに嫌われちゃったか、ねェ……」
魔法使い「そんな事ないです。僕が言ってるのはオリジナルに加えて禁術複製さんも、という意味です」

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#ちょっとズレてるお人好しども
#破術争奪戦編

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Post-0184

術士「じゃあ剣士と盗賊娘を呼んでくるよ。あの二人は魔法の知識はないが頭が切れる。絶対に役に立つ」
聖騎士女「頼めるか。敵が外を見張っている可能性が高い、魔法のエキスパートが動いてくれるのは助かる」
偽聖騎士「なるほど、彼が君のパーティの一員か。頼れそうだ」
術士「聖騎士女やまほクンみたいに天才じゃねえけどな。じゃあ行ってくる」
術士「出た瞬間かよ……<魔力遮断>!棘がデカくなる前に魔力を防げばおもちゃができるだけだな」
盗賊「ヒュー、やるねぇ。目はアレだな。ほらよ」
術士「盗賊、投げナイフは聖騎士女と同じくらい上手いな」
盗賊「あの天才に並ばせて貰えるなんて光栄だね」
術士「はっは。じゃあ適当にあしらいながら行くが、まほクン、分かるな?」
魔法使い「まほクンはやめて下さい……。分かりますよ。次は酒場の中に巨大な棘を生成しますよね」
術士「多分、な。方法は見せたぞ」
魔法使い「わかりました。お気を付けて」
術士「はっは。まあこういう時は一人の方がやりやすいからな」
魔法使い「方向は分かっているので、先に打ちましょう。<魔力遮断>!」

禁術娘「手慣れてるねェ……」
禁術複製「俺っちと考え方が一緒だねぃ。これは正面からやると危ないねぃ。本人が油断してなくてもひっくり返るねぃ」
魔法使い「慣れてなんかいないですよ。こんなの慣れない方がいい」
禁術複製「そりゃそうだねぃ」
魔術師「あ、あなたたち何者なんですか……?」
盗賊「それをまとめて話すために人を呼んでるんだ。ちょっと待ってくれ」
聖騎士女「大丈夫、今ここは恐らくこの地方で最も安全な場所だ」

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Post-0183

男「助かりました。本当にありがとうございます」
偽聖騎士「良かった。しかし屋外は危ない。一旦酒場に入ろう。迷惑でないといいが」
聖騎士女「この酒場はおそらくこの街の中でも一、二を争うほどに安全だと、私は思う」
偽聖騎士「君がそう言うなら安心だ。お邪魔するよ。さあ君もこっちへ」
男「ありがとうございます」
禁術娘「見てたよ。お仲間、だねェ」
禁術複製「安全というかむしろ蛇の穴かもねぃ」
男「ひっ」
戦士「大丈夫だ、口だけだよ。今のところな」
盗賊「全然大丈夫じゃねえな」
騎士「互いに必殺の術を持つ者が先手を取らない時点で戦う気はないと判断できるな」
術士「大丈夫、魔法だって分かってるなら手の打ちようはいくらでもある。さ、入んな」

男「ありがとうございます。私は王都からこちらに派遣されてきた魔術師です」
聖騎士女「何があったのかを分かる範囲で教えて貰えるだろうか」
魔術師「はい。私や師を含む一門は秘伝の術を使って主に大がかりな治水を行っていました」
禁術娘「……秘伝の術、ねェ……」
魔術師「私達に伝わる術は一点と一点を結びつける術です。単純に言うと、水の湧かない場所と水源を結びつけて水を通す事ができるのです」
盗賊「すげえ術だな」
魔法使い「空間を結ぶには維持コストが必要ですよね。どうやって魔力を供給しているんですか?」
魔術師「私達の術には維持コストが不要なのです」
魔法使い「まさか、ちょっと考えづらいですよね……」
魔術師「私はその最中、この地方の上水と下水のためにこちらに出向してきたのですが、王都では私の一門が次々に殺害されたという知らせがあったのです」
禁術複製「まあ、そうだろうねぃ」
魔術師「そして先日、私以外全員死んだという話を聞いて危険を感じ、身を潜めていたのですが、突然襲われたのです」
禁術娘「良く一撃でやられなかったねェ」
魔術師「実際最初で死ななかったのは偶然です。私が落とし物を拾おうとしてかがんだ瞬間、私の上半身があったところに棘の塊ができました」
禁術娘「悪運があったねェ」
魔術師「そこで位置指定の術だとわかったので、フェイントをかけながら逃げました。しかしどこに逃げても術が追いかけてきて……」
聖騎士女「そこで我々が出会ったわけだな」
魔術師「そうです。あの術でなぜ死ななかったかは私にもわかりません……」
禁術娘「アハハ、ようこそ破術争奪戦へ。アンタの運命は奪って生き残るか、奪われて死ぬか、みんなで降りるかだよ、ねェ」
禁術複製「あれ?みんなって俺っちを入れてくれてる?」
禁術娘「いや、アンタは降りるなら勝手におりな」
魔術師「破術……?」
禁術複製「一門が持っていた術は四門四術の移送門<接続>。悪く使えば心臓を外につなげて血を出したり、体内に深海をつないで爆散できるねぃ」
魔術師「言ってる意味が……?」
禁術娘「お仲間だからね、聞かせてあげるよ。ついでに聞きたい人はいるかい?」
術士「すまん、聖騎士女が関わった以上、ウチから剣士と盗賊娘を呼んでくる。待っててくれるか?」

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Post-0182

聖騎士女「すまない、失礼する。僧侶と魔法使いはいるだろうか。訳を聞かずまず助けて欲しい」
禁術娘「……?」
聖騎士女「……!?禁術使い……!動くな!動けば斬る!」
禁術複製「両手をあげるから勘弁して欲しいねぃ。まあ詠唱破棄できるから手を上げてても魔法は使えるんだけどねぃ」
聖騎士女「それを言って斬られる可能性もあるのにそれを言う判断ができるなら迂闊な事はしないな。しばらく手をあげていてくれ」
禁術複製「ありがたいねぃ。知らない美人さんだけど身のこなしが洒落にならないから事を構えたくないねぃ」
聖騎士女「すまない、僧侶と魔法使い、助けて欲しい相手は酒場に入って来られないので表に出て貰えるだろうか?」
僧侶「あ、はい。もちろん」
魔法使い「すみません、禁術娘さん、ちょっと出ますね」
戦士「禁術複製は見張っておくな。ただ死なねーなら、何やっても逃げられるかもな」
魔法使い「あはは、そもそも熟練の魔法使いなら詠唱破棄で<転送>使って逃げるので何しても無駄ですね」
盗賊「そんな事ができるのか……」
魔法使い「盗賊さんが詠唱破棄で<転送>使えるようになったら誰より先に探知して逃げられるので洒落にならないですね」
盗賊「はは、これから魔法を覚えてそこまで磨く前に寿命が来るな」
魔法使い「あはは、じゃあちょっと行ってきます」

偽聖騎士「すまない、この人を助けてくれる僧侶君と魔法使い君か。恩に着る」
男「あああああ!あああああ!棘を、消して、くれ!」
僧侶「酷い……。致命傷です。助からない……」
魔法使い「こんな、ひどい。これは、魔法ですか……?」
聖騎士女「明らかに致命傷だが、彼はずっと死なないで今に至る。棘を<消滅>させつつ<治癒>をかけて貰えないだろうか?」
僧侶「なるほど、それなら。助かる可能性があるなら何でもします」
魔法使い「つまり、内側から<消滅>させながら<治癒>するという事ですね。先に外を消すと失血で死にます……」
偽聖騎士「そうするのか。頼む」
魔法使い「ですが、中が見えない以上<消滅>で内臓が削れます。<治癒>が間に合っても相当痛いですよ」
聖騎士女「見ての通り彼は既に地獄の悶絶の中だ。多少痛みを増しても最終的に消える方が良いはずだ」
偽聖騎士「彼は錯乱していて判断ができない。が、叫んでいるように棘を消して欲しいと望んでいる。俺からも頼む」
魔法使い「わかりました。じゃあ、僧侶さん、息を合わせましょう。凱旋の歌のリズムで1、2、3、<消滅>!」
僧侶「<治癒>!」
偽聖騎士「凄い連携だ……」
聖騎士女「王国広しと言えど、この連携ができる高位の術者は両手の指で数えられるだろうな」
偽聖騎士「君がこの酒場を選んだ理由がわかるよ」
僧侶「さぁ、傷は癒えました。もう痛みはないですか……?」
男「た、助かった……。ありがとう。本当にありがとう」

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Post-0181

禁術複製「ありがたいねぃ。俺っちは破術の争奪戦には興味ないんだよねぃ。でも放置すると襲われる」
禁術娘「当たり前だよ、ねェ。誰も知らない破術持ってるんだろ。じゃあ取られる」
禁術複製「そうなんだよねぃ。しかし死なない事には争奪戦から離脱できないし、死んだらおしまいなんだよねぃ」
魔法使い「禁術複製さんが<複写>を知っているなら、自分をコピーして増やせば戦力になるのでは?」
禁術複製「誰だってそう思うよねぃ。<複写>はさ、何でも複写できるけど、人間を複写した時は別途<支配>しないと言う事聞かないよねぃ」
魔法使い「ああ、なるほど」
禁術複製「誰だって思うよねぃ。目の前に本人がいるなら入れ替わっちゃえばいいんだって。だから人間をコピーしたら最初にするのは<支配>だよねぃ」
魔法使い「つまり、増やした分だけ<支配>を維持しないといけない。そうすると増やせば増やすほど維持コストがかかる」
禁術娘「そう、結局増やすところで1人や2人。でも、コピーが<複写>を使えば、そのコストはコピー持ちだよ、ねェ」
禁術複製「残念ながらコピーの魔法コストは本人の空きコスト依存なんだよねぃ。だからオリジナルが消えるまでは俺っちもコストが少なかった」
禁術娘「……今は、コストが開いてて魔法が使える、って言うんだ、ねェ」
禁術複製「身構えないでいいねぃ。どうせどっちも不死、やり合ってる間に横やりが入るのが一番マズいねぃ。やるなら酒場に入る前に酒場ごと消してるねぃ」
禁術娘「で、アタシとまほクン達、どっちに用事なんだい?」
禁術複製「話が戻って助かるねぃ。実際どっちも用があるから一緒にいてくれて助かるねぃ」
騎士「我々にも用がある……だと?」
禁術複製「もちろん。本人から解放してくれたお礼と、あと、お願いがあってねぃ」
騎士「僧侶が言うとおり、話だけは聞こう」
禁術複製「まず妹ちゃんにお話するねぃ。二人で組んで、破術争奪戦から降りよう」
禁術娘「はぁ……?今降りるって言った?」
禁術複製「言ったねぃ。本人は破術を集めていたけど、俺っちはどうでもいいんだねぃ。俺っちレベルの術士が簡単に死ぬなら破術なんて集めてる場合じゃないねぃ。俺っちはまだ死にたくないねぃ。なら、俺っちしか知らない破術を持ったまま争奪戦から離脱したいねぃ」
禁術娘「都合の良い事を……!」
禁術複製「わがままだって言うなら不死は手放してもいいねぃ。いつ襲われて拷問されて奪われて殺されるかがわからない、っていうのは、実際『死なない』とはほど遠いねぃ」
禁術娘「クズだって、あれから何人も奪って殺してきたんだろう……!?」
禁術複製「本人が消えるまではねぃ。でもそれは俺っちが殺そうとしての事じゃない。支配されてやった事だねぃ。それに参加している奴はみんなそれを承知だねぃ」
禁術娘「クズと話す事はないねェ。どこかで野垂れ死にな」
禁術複製「クズって言われると傷つくねぃ。僧侶の人、ちょっと助け船出してくれないかねぃ?」
僧侶「支配が呪いによるものなら、その命令に逆らうのは至難の業ですね。おそらく解除しようとしない事も含めて命令されているでしょうから、打つ手はほぼなかったんじゃないかとは思います」
禁術複製「本当に助かるねぃ。そして本人が<支配>を使える以上、俺っちも<支配>が使えるねぃ。個別で遭遇して初手で<支配>使えば妹ちゃんは言うこと聞くしかなかった。それをしなかった事を評価して欲しいねぃ」
禁術娘「考え方はクズそのものなんだねェ」
禁術複製「まあそのクズの複写だからねぃ。でも俺っちは本人と分かれて別の道を歩いているねぃ」
禁術娘「悪人が更生したっていう自己申告を信じる馬鹿がいるとでも思ってるのかねェ……?」
禁術複製「目覚めた瞬間に『お前は偽物だ』『偽物だと分かるように喋れ』『命令に従って破術を奪って人を殺してこい』って言われて、疑問に思わない人間っているのかねぃ?複写された瞬間は本人と同じかもしれないけど、初手でもう本人とは違う運命なんだよねぃ」
禁術娘「……やっぱり、信じられない。アンタは無表情でアタシを『いじった』クズ本人にしか見えない」
禁術複製「まあ、しょうがないねぃ。ただ、一緒に降りたくなったら言って欲しいねぃ。妹ちゃんは争奪戦嫌いでしょ?」
禁術娘「クズも嫌いだよ」

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Post-0180

戦士「で、結局よくわからねえんだけど、何をどうすればいいんだ?」
禁術娘「アハハ、正直どうすればいいかわかんない、ねェ。実際争奪戦から降りられるなら降りたいんだけど、降りるって事は死ぬって事だ、ねェ」
魔法使い「そうなんですよね。結構条件が複雑なんです」
盗賊「複雑、か」
禁術娘「その術を知る唯一の者は死なない」
魔法使い「あ、禁術娘さん、痛いのに見せなくていいです。みなさん、彼女本当に死にません」
騎士「魔法使いがそういうならそうだな。死なないのだろう」
禁術娘「信じるのかい」
騎士「本当に魔法使いが騙されるのであれば我々が疑っても騙される。死なないというのが真実である方がよほど説得力がある」
禁術娘「術を奪えば知っている者が1人ではなくなり、殺せるようになる、ねェ」
盗賊「奪い合いに参加している以上、殺せるなら殺すな。そうすれば自分が死なないようになる」
魔法使い「そうです。見逃したとしてまた襲いかかってくる恐れがありますから」
僧侶「そうなると、例えば魔法などでその術自体を忘れるというのはどうでしょうか……?」
禁術娘「もちろん試したよ。そういう呪文は効かないんだ。多分唯一知る者がその術を忘れる事で術自体が失われる事を防いでる、ねェ」
僧侶「そうなると、術を知ってしまった時点で脱落ができない……」
魔法使い「そうなんです。だからすべきなのは『誰も殺さずに争奪戦に勝つ』と同時に『争奪戦の結果得られたものを公開する』です」
戦士「……?意味が今ひとつわかんねえ」
術士「つまり、破術争奪戦の主眼は破術の希少性。それを集めて奥義に至り、不死とその奥義で支配者になりたいって事だろ。なら、少なくとも破術と奥義が広まれば希少性がなくなる。そして破術を知る者が増えれば増えるほど不死になる事が難しくなる」
魔法使い「まあ、ただ広めるだけだと無差別攻撃魔法が広がってしまうので、そのあたりを上手くアレンジしたものが広まるのが理想的ですよね」
禁術娘「ま、そういう事、だねェ。ただ、不死に術を吐かせるにはちょっと手荒な事をする必要があるよ、ねェ」
魔法使い「いえ、それについてはあなたのおにいさんが便利魔法の凄い応用を教えてくれたので大丈夫です」
禁術娘「あの、クズが……?」

???「おーう妹ちゃん、お兄様をクズ呼ばわりとは俺っち、ちょっと悲しいねぃ」
全員「!?」
呪術女「あーるるるるるぅあぇー」
戦士「ちょっと痛えぞ」
騎士「前線は前に、他は横に散ってくれ!」
術士「詠唱破棄!<魔力消失>待機!」
魔法使い「禁術娘さん、横に!」
禁術娘「クズが死んだって嘘じゃないか……!」
???「避ける必要ないねぃ」
禁術娘「ナイフを避けない……?って、違うね、アンタ誰だい?」
???「心臓にナイフ刺しながら言う台詞じゃないねぃ。普通死ぬねぃ」
禁術娘「クズは自分の事俺っちなんて言わないんだよ」
???「そりゃそうだ。複写は分かるように名乗れって言われたからねぃ。そろそろナイフ抜いてくれないかねぃ?」
魔法使い「死なないって事は唯一の破術持ちですね」
???「そうだねぃ。特別に教えてあげるよ。<複写>だねぃ。まあオリジナルが消えたから俺っちが不死になったんだけど」
禁術娘「で、何しに来たんだ、クズの模写」
禁術複製「可愛い妹にそう言われると心が痛むねぃ」
禁術娘「散々人で実験しておいてよく言うよ」
禁術複製「やったのはオリジナルで俺っちは別人。偶然同じ記憶を持ってるだけの双子だねぃ」
戦士「いちいち腹立つな」
禁術複製「いやいや、俺っちなにも悪さしてないねぃ。初対面という事で穏便にはいけない感じ?」
僧侶「あまりにも難しい判断ですが、まずお話を伺いましょう」

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Post-0179

聖騎士女「む……?男性が泣きわめきながら走っている。助けねば。おーい男性!」
偽聖騎士「まかせろ!男性、何から逃げているんだ!?オレが引き受ける!」
男性「た、助けて……!アイツが、アイツが追ってくる……!」
偽聖騎士「アイツ?誰だ!?」
男性「だ、駄目だ。みんなやられた。見えない所から襲われる……!」
聖騎士女「遠隔呪文だ!この時間に蝙蝠など飛んでいるはずもない!目を潰す!」
偽聖騎士「投げナイフ!お見事!」
男性「うわぁぁぁぁぁ!」
聖騎士女「間に合わなかった……身体の内側から無数の棘が……!むごい……」
偽聖騎士「すまない、助けられなかった……」
男性「ああああああ!ああああああ!ああああああ!」
偽聖騎士「動ける、のか……?信じられん」
男性「ま……魔術師に……<消滅>を……」
聖騎士女「わかった。即死でないなら僧侶に治して貰いながら魔法使いに棘を消滅させて貰えるはずだ」
偽聖騎士「死なない傷ではない。後で話を聞かせて貰うよ」

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Post-0175

魔法使い「では、詳しいお話を……。っていうか皆さんお酒持ってますね」
僧侶「ただいま戻りました。今日は一つ笑顔を守れたいい日になりました」
戦士「お、お帰り。せっかくだから飲んじまうか。そっちの子はイケる口?」
禁術娘「めちゃくちゃ緊張感ないねェ」
騎士「常に張り詰めているといつか切れるからな。張り詰めずに網を張っておくのが冒険者だ」
禁術娘「アハハ、お見事。せっかくだから、貰おうか、ねェ。禁術娘って呼んでいいよ」
戦士「よろしくな、禁術娘。じゃ、カンパーイ!」
魔法使い「あれ?ああ、あの時ぶりです、呪術女さん」
呪術女「……!?し、失礼、つい、夢中に」
蛮族娘「呪術女、甘い物、大好き。夢中に、なる」
盗賊娘「おいしかったもんね、あのパイ。もう一個食べたかったなぁ……」
看板娘「はいよ!ちょっとお高いよ!なにせ時価だからね!」
術士「あるだけ持ってきてくれ。蛮族娘も呪術女もおかわりいるだろ?そっちの子は?」
看板娘「まいどー!」
禁術娘「……」
盗賊「だから、全員、油断はしてねえって。左手にあるその粉、ろくな効果じゃないんだろ?」
騎士「そこまで我々を試して、何がしたいのだ?もちろん魔法使いが連れてきた客人、可能な限り助力はするが、あまり試されても気分が良いものではない」
禁術娘「わかった。アンタらのその感度なら確かにアタシの兄、禁術使いを倒せる。破術争奪戦でも上位の男をだ」
戦士「禁術使い……?聞いた事ねえ名前だな」
騎士「いや、銀騎士殿が取り調べで答えていた。辺境にいたあの魔術師だな。であれば、我々は倒してない」
禁術娘「……は!?」
盗賊「あの魔術師を倒したのは、お前の横にいるまほクンと、そっちでパイ食ってる呪術女の2人だよ」
禁術娘「二人で……?」
魔法使い「厳密にいうと僕も主戦力じゃないです。主にあっちの呪術女さんのお手柄です」
禁術娘「あそこでパイ食ってる……?隙だらけじゃないか……」
戦士「酒場で飛び道具を投げるのはナシだ」
魔法使い「呪術女さんは歌のプロフェッショナルです。肉弾戦では計れないですよ」
禁術娘「ちょっと、待ってよ、ねェ。クソ下らない破術争奪戦を終わらせる手伝いを頼みたいんだ。誰に頼めばいいんだい……?」
魔法使い「大丈夫です。みんな、協力してくれます」
禁術娘「油断すると破術をぶち込まれるとんでもない依頼なんだよ……?」
魔法使い「頼まれなくても、禁術娘さんのそばにいるならぶち込まれる可能性があるんでしょう?なら、終わらせましょう?」
盗賊娘「ごめんね、詳しく聞かないとなんとも言えないけど、あなたのそばにいる事で誰かが怪我したり死んだりするなら……」
戦士「悪いのはお前じゃなくて、ちょっかいかけてくる奴だよな」
盗賊娘「だから、こう言うよ。『そんな奴はぶっ飛ばせばいい』って」
禁術娘「参った。修羅場くぐってるのはアタシだけじゃないんだ、ねェ。とりあえず、そのパイ貰おうか」
蛮族娘「パイ、美味しい!」
禁術娘「アハハ、落ち着いて甘い物なんて食うの、もういつぶりか覚えていないよ、ねェ……」

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Post-0174

魔法使い「ただいま、かえりましたー。戦士さんにプレゼントの前に、もう一人お呼びしていいですか……?」
戦士「お前がモジモジするのも大分慣れてきたからな。男の子?女の子?」
魔法使い「あははー。女の子です。禁術娘さん、どうぞー」
禁術娘「どうもこんにちわー。まほクンにナンパされてついてきましたー」
騎士「おっと。魔法使いが……」
魔法使い「あわわ、そうじゃなくて……」
禁術娘「まほクンったら強引で、無理矢理迫ってきて、女の子が決して人に見せないところまで見られちゃって……責任とってもらわないと……」
戦士「魔法使い、そういうのは男らしいっていうのとはちょっと違うと思うぞ」
盗賊「はは……、っと、手のひらに隠してる千枚通しをしまえ。顎から通すと脳に届く」
禁術娘「アハハ、バレちゃった。どれくらいの実力か見てやろうと思ったんだけど、ねェ」
戦士「いや、みんな気づいてたぞ。あまりにも殺気が露骨すぎる」
騎士「しかしそれを見逃す魔法使いでもない。つまり、試すだけのつもりで敵意はないのだろう?」
禁術娘「あー、このレベルが複数なら、あのクズでも舐めてかかればひっくり返るねェ……」
盗賊「あのクズ?」
禁術娘「アタシが殺そうと思っていた兄貴を消してくれたんだから、お詫びに言う事を聞いて貰おうと思って……ねェ?」
騎士「詳しく話して貰えるだろうか……?」
禁術娘「もちろん。雑魚に話すと命の危険を呼ぶが、アンタらなら話しても大丈夫そうだ。なら味方は多い方がいい」

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Post-0173

魔法使い「オリジナルの禁術を知る最後の一人は死なない事はわかりました。だから、もう痛い事を自分にしないでください」
禁術娘「優しいんだ、ねェ。そういう奴は早く死ぬ」
魔法使い「まあ、誰だって死ぬまでは『今まで死んでいないから』って言ってますよね。言えなくなった時点で言える状態にもないですし」
禁術娘「アハハ、確かに普通は1回しか死ねないから、ねェ」
魔法使い「オリジナル禁術を持っている事によって『死なない』っていうの、かなりのアドバンテージですよね。なぜお兄さんは不死にならなかったんでしょう?」
禁術娘「アハハ、それも簡単だよ。例えば禁術持ちを破城の鉄槌で消す、と、手足のない胴体が地面に落ちる。確かに死んではいない、ねェ」
魔法使い「なるほど。その状態で捕まれば、手足がゆっくり再生しても逃げられない」
禁術娘「そう。そこから逃げられない尋問がゆっくり始まる。だからクズは実質詰むなら不死にこだわる必要がないと、判断したんだろう、ねェ」
魔法使い「そう考えるとひどい仕組みですね。他を殺せば自分が不死になる。奪うために聞き出して、それによって不死が解け、殺される事で奪った側が不死になる」
禁術娘「悪意しか感じない、ねェ。でも、禁術持ちはみんな全ての禁術を集めて破術の主を目指す。全ての破術を持つ唯一の命ある不死になるために」
魔法使い「なるほど、本来不死は負の生命力でしかありえない。それを生きながら達成し、全ての破術を手に入れる事で絶大な力を持てる」
禁術娘「それに、ねェ。全ての破術を集めて破道を復元すれば、今の魔術から意図的に取り除かれた、魔道の神髄を知る事ができるんだそうだよ、ねェ」
魔法使い「魔術、ではなく、魔道……。魔法学院ですらタブーとされる原初の魔術……。とんでもないですね。あまりにも魅力的すぎる」
禁術娘「だよねェ、アンタには、ね。せっかく破術を手に入れたんだ、参加するかい?」
魔法使い「いいえ。殺し合いの末にそんな物を手に入れても意味がありません。正しい知識は正しく手に入れなければ」
禁術娘「いい判断だ、ねェ。今参加したら、この場でアンタを殺すしかなかった。舌ピアスにするのはまた今度にしよう、ねェ」

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