Post-0169

盗賊娘「熊の力は、危ないよ……?」
蛮族娘「熊の力、練習、必要。力、熊の皮、外す、なくなる。盗賊娘、熊の皮、取れる」
盗賊娘「うん、絶対じゃないけど、多分、できるよ」
蛮族娘「盗賊娘、も、勇者。オレ、安心。その前に」
盗賊娘「あれ、これ熊のなめし皮?」
蛮族娘「熊の頭、被る。盗賊娘、お揃い、喜ぶ」
盗賊娘「そうだね、お揃いだね。似合うかな……?」
蛮族娘「完全な、勇者。見とれる」
盗賊娘「えへへ」
蛮族娘「勇者、勇者、止められる。オレ、悪さ、我慢、する。もし、オレ、止める、任せた」
盗賊娘「うん、わかった」

盗賊「ただいま。猫のおもりで木に登る羽目になった」
術士「どうも。そろそろ盗賊娘が帰って……きてるな。お帰り。楽しかったか?」

蛮族娘「ぐらぁーう゛ぁー!」
盗賊「おい、蛮族娘薄く光ってるぞ!?」
盗賊娘「あ、あれ……?」
術士「おい、盗賊娘も光って……こっちに向かってくる!?」

盗賊「おっと、術士は肉弾戦無理なんだ。こっちに来てくれ」
術士「焦点合ってないし目が血走ってるぞ!とりあえず寝かせる!<眠り>!……って寝ないだと!?」
盗賊「おいおい神殿術士レベルの魔法で寝ないのかよ……、って蛮族娘はまだしも盗賊娘が早くて力が強い……!これは厄介だ!」

呪術女「熊の皮、外せ」

盗賊「助かる!」
術士「すれ違いざまに熊の皮を『盗む』。さすが盗賊」

蛮族娘「……。悪さ、我慢する、できなかった」
盗賊娘「……。一瞬目の前が真っ白になって……。わたし、何を……」

呪術女「勇者、の、熊の叫び、は、他、に、伝わる」
盗賊「なるほど、同じ格好してる奴に伝わるんだな……。魔法使いが喜びそうだぜ」
術士「ところで、何故、呪術女が王国領に……?」

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Post-0167

魔法使い「と言うわけで、ごめんね、お兄さんはもういないんだ」
禁術娘「それは……もうわかってるよ、ねェ」
魔法使い「だから、そのナイフは自由に使って。でも、僕も身を守らなきゃいけないから、黙ってやられるとは約束できないよ。ごめんね」
禁術娘「まあ殺そうとすりゃ殺されるよ、ねェ……。襲ってくる他の禁術持ちもみんなそうさ」
魔法使い「うん。僕はお兄さんに悪意こそあったけど、それでどうこうしようと思ったわけじゃないんだ。でも、その結果お兄さんがいなくなった事は否定しないよ」
禁術娘「丁寧に、話すねェ」
魔法使い「当然だよ。君は安心してるけど怒ってもいる。それは遺族として当然だよ」
禁術娘「舌ピになりたい酔狂にも見えないし、ねェ……」
魔法使い「とりあえず安心して話し続けていいのかな……?普通禁術っていうと国と魔法学院に止められた術を指すと思うんだけど。」
禁術娘「アタシらの言う禁術はそんな可愛いものじゃない、ねェ。魔術が体系化された時に切り離された、破術と呼ばれる魔術体系さ」
魔法使い「聞いた事だけあります。魔法学院ではメンターの僕ですら触れる事が許されない領域だ……」
禁術娘「ははッ、メンター様だったのかい。まあ破術って言っても難しい術じゃない。難しくないのにとんでもない効果がでるから駄目なのさ」
魔法使い「そういえば、お兄さんは気軽に破城の鉄槌を3回連続で唱えていた……」
禁術娘「隕石が降るクラスの魔法を3連続で唱えるのは、ちょっと天才を超えている、ねェ?」
魔法使い「と、とんでもないですね」
禁術娘「それを、アンタは頭脳だけでコピーした……。やっぱり殺しておこうか、ねェ?クズの分のピアスが余ってる。舌につけて大事に連れ歩いてやるよ」
魔法使い「使わないから見逃して貰う、という訳には」
禁術娘「あはは、アタシは見逃してやるよ。ただ、今アタシが死んだら破城の鉄槌持ちはアンタ一人になる、その瞬間、アンタの人生は変わる」
魔法使い「今ではなく、僕1人になったら?」
禁術娘「死ぬなら先に死んだ方がいいよ。破術は決して失われない。なぜなら」
魔法使い「なぜなら……」
禁術娘「その術を知る最後の一人は、死なない」

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Post-0166

戦士「よう、ただいま。無縁墓地か。穴を掘ればいいか?」
騎士「話が早くて助かる」
僧侶「すみません、故郷の帰りにこんなお願いを」
戦士「いや、いいよ。騎士も運ぶのに疲れてるだろうし、僧侶には祈りの仕事があるだろ」
僧侶「すみません、今日は私も穴を掘ります」
戦士「わかった。聞かねえ。ほらシャベルだ。普段使わないだろうから背筋痛めるなよ」
騎士「私も手伝おう。しかし、戦士は何故穴掘りも得意なのだ?」
戦士「傭兵時代に散々塹壕掘ったからな。投石機で飛んでくる石は地面より下に隠れないと駄目だからな」
騎士「なるほど、塹壕か。それは掘った事がないな。師の黒騎士殿は経験があると言っていた記憶がある」
戦士「面白い騎士様だな。塹壕掘るのなんて下っ端の仕事なのにな」
騎士「善い方だ。誰に対しても分け隔てなく接し、そして考えが深い。いつか戦士達を紹介したいと思っていた」
戦士「はは、騎士が尊敬する人なら悪い人のわけがねえな。堅苦しい場じゃなきゃいつでも歓迎だぜ」
僧侶「私もそのように思慮深ければ……」
騎士「自分を責める前に穴を掘れ。そして、後悔によって事実を変えては駄目だ」
戦士「なにがあったのか知らねえけど、自分を変えるのは難しいし、人を変えるのはそれより難しいと思うぞ」
僧侶「今の私は、僧侶でも聖堂騎士でもなく、泣きながら穴を掘る一人の男に過ぎません」
戦士「男だって泣いていいんだからな。ただ、誰かがお前を泣かせたんなら俺はそいつを殴る。だからお前を殴らせるな」

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Post-0164

魔法使い「詳しく話す前にまず、街ごと僕を殺すのではなく僕だけを殺すと誓って。これを使っていいから。人を巻き込まないでくれる?」
少女「意外と、肝が、座ってるねェ。まあ殺す手段は問わないよ。悪かないナイフ……この、紋章は……!?」
魔法使い「うん、見覚えがあるならお兄さんで間違いない。お兄さんの唯一の形見だから、まず返すよ」
少女「形見……。本当に、あのクズは死んだんだねェ……。こんな手がかりを回収せずに立ち去るようなマヌケじゃない、ねェ」
魔法使い「うん、詳しく話してもいい?」
少女「そうか……。じゃあ、クズの分はピアスを増やさなくていい……ねェ」
魔法使い「お兄さんについて、怒っているのに安心しているんだね。話し終わっても僕が生きていたら後で詳しく教えて。」

少女「つまり、あのクズは出会った時点で雌蜘蛛に憑かれていた、と。そして黄金の呪いに蝕まれ、聖騎士の手によって消滅した」
魔法使い「うん、経緯としてはそうだけど、お兄さんが消えた理由は僕らにある」
少女「あのクソ野郎をこの手で殺せなかったのは残念だけど、消えたならそれでいい、ねェ。これでクズとアタシの持っていた禁術は、アタシだけのものになった、ねェ」
魔法使い「ごめんね、禁術って、お兄さんの使っていた破城の鉄槌?あれなら詠唱を2回見て発動を1回見たから、多分僕同じ術使えるよ」
少女「はぁ?禁術の<能力複製>使わないで詠唱聞いただけで使えるっての……?」
魔法使い「うん……多分」
少女「あははははは!ア、アタシ達が殺し合って無理矢理引き出して集めている禁術を、お前は、見ただけで、ねェ……あはははは」
禁術娘「あはははは……死にな。詠唱破棄!<破城の鉄槌>!」
魔法使い「あわわ、<対抗呪文>!」
禁術娘「あはははは!<対抗呪文>で打ち消せるのは使える呪文だけだよ、ねェ。本当に使えやがる……」
魔法使い「やられました。範囲を絞って僕に当たらないように打つ事で<対抗呪文>を引き出しましたね……」
禁術娘「まあそういう一族だからね……。しかし困った。禁術使いは禁術を集める。相手が追ってこないように殺す。同じ禁術を複数が持つのはあらゆる意味で認められない、ねェ」
魔法使い「じゃあ、そうなっちゃう感じ、ですか……?」
禁術娘「構えなくていい。アタシはこんな下らない殺し合いは好きじゃない。襲いかかってくる相手には容赦できないが、そうじゃない相手をどうこうしようとも思わないよ、ねェ」
魔法使い「じゃあ、ちょっと安心してもいいんですよね……?」
禁術娘「アンタならこの舌ピアスに加えてあげてもいいんだけど、ねェ」

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Post-0163

戦士「さ、花も手向けたしそろそろ帰るか。柄にもない事をしたせいか、ちょっと疲れたぜ」
盗賊娘「うん、帰ろう。帰ったら酒場でエールを飲んで、たまにサウナにも行くといいよ」
戦士「サウナか、いいな。散々我慢した後に引っかけるエールが最高だよな」
蛮族娘「サウナ?何?」
戦士「あー、なんて言うんだ、あれ。自分を蒸すんだよ」
蛮族娘「蒸す?自分、食べる?愚か?」
戦士「やってる事は我慢大会だから賢くはねえな。が、まあ一回行って見ろよ」
盗賊娘「帰ったら、一緒に行く?」
蛮族娘「試す、良い事。試さず、断る、勇気ない」
盗賊娘「きっと気に入るよ」
戦士「また森で狼呼ぶのか?」
蛮族娘「ううん。もう、狼、仲間。必要ない、呼ぶ、しない」
盗賊娘「そうだね。友達でも用のないときに一杯呼ぶと迷惑だもんね」
戦士「寂しい時に呼ぶのは用があるって言うけどな」

蛮族娘「……?」
盗賊娘「……狼でも、熊でもない気配!」
戦士「お、蛮族娘、熊の皮被るのか?」
蛮族娘「ぐらぁーう゛ぁー!」
盗賊娘「目の錯覚?蛮族娘が薄く光ってる!?」
蛮族娘「ぐらぁーう゛ぁー!」
戦士「斧振り回しながら突っ込んでった……。あれは手負いの猪!でかい!避けろ蛮族娘!」
蛮族娘「ぐらぁーう゛ぁー!」
盗賊娘「あの巨体の突進を前から受け止められるの……嘘……」
戦士「そのまま投げ飛ばして斧で止め。やってる事が熊だぞ」

蛮族娘「ぐらぁーう゛ぁー!」
戦士「こっちむいて突っ込んでくるな……」
盗賊娘「ちょ、ちょっとやめて、蛮族娘!?」
戦士「じゃあちょっと失礼して……おら!」
盗賊娘「受け止めて持ち上げるの……?」
戦士「相撲じゃまだ負けないからな。落ち着け……ないんだな。ちょっと締めるぞ。毛皮が邪魔だ」
蛮族娘「……?苦しい、戦士、やめる、して」
盗賊娘「正気に戻った……」
戦士「あー、毛皮が原因か」
蛮族娘「勇者、熊、力、借りる。熊の勇者、全て、勝つ」
戦士「強いのはめちゃくちゃわかったから、ちょっと使い方考えようぜ」

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Post-0162

魔法使い「戦士さん達そろそろ帰ってきますね。せせらぎ村のワインでも買いに行きましょう」
ごろつき「なあねーちゃん、俺たちと遊ぼうぜ?」
少女「近づくな。街ごと吹き飛ばされたいのか、ねェ?」
ごろつき「おー怖い怖い。いいから付き合えよ」
魔法使い「あれ、あちこちにピアスをつけてる女の子だ。ちょっと怖いけど困ってるんだよね、きっと」
魔法使い「ねえ、ナンパ断られて食い下がるのは格好良くないよ」
ごろつき「あンだって?って、魔法使いか……」
魔法使い「あ、僕のこと知ってるんだ。じゃあわかるよね?僕殴られても引き下がらないよ?」
ごろつき「けッ、腰巾着の分際で!戦士とかが来る前に見逃してやるよ」
魔法使い「戦士さん今いないですけどね。でも見逃してくれるなら。さ、行きましょう」
少女「触んな!気安いんだよ、ねェ?」
魔法使い「ご、ごめんね。連れ出すのが嫌なんじゃなくて触ったのが嫌だったんだよね。それは本当にごめん」
少女「ちッ、ついてってやるよ。お代になんか奢って貰うよ、ねェ?」
魔法使い「あはは、じゃあお茶でも。これって僕がナンパした事になるのかな?」

魔法使い「落ち着いた?ここのお茶は茶葉も蜂蜜もいいんだよね」
少女「悪かない、ねェ」
魔法使い「気に入って貰えて良かった」
魔法使い「見かけない顔だけど、もし良かったら力になるよ」
少女「んー。まあ素人になら話してもいいかも、ねェ」

魔法使い「なるほど、禁術を求めて旅立った兄を探している、と。黒髪でいつもニヤニヤしていて口癖が『ねぃ』。」
少女「そう、手段のために目的を選ばないクソ野郎だ。禁術が漏れる前に殺さないと、ねェ?」
魔法使い「ごめん、僕には心当たりがある。そして、僕らのせいでお兄さんはもうこの世にいない」
少女「……なんだと……!?口を慎め、お前は今街と共に死ぬ運命の分岐路にいるぞ」

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Post-0161

黒騎士「君と最後に打ち合ってからどれくらいになるだろうな。随分名を上げたようだ」
騎士「いえいえ。黒騎士殿に師として教えを請うたからこそ、今の私があります」
黒騎士「主を定めず流浪に生きる私に教えを乞いに来た時には驚いたものだ」
騎士「いえ、黒騎士殿は誰よりも騎士として素晴らしい。主に悪意を向けた貴族を単身討伐し、責任として騎士号を返上された。誰にでもできる事ではない」
黒騎士「はは、なるほど、剣の腕ではなく行いを見ての事だったのか。その行いも褒められたものではないが」
騎士「何を仰るか。黒騎士殿の勲は王国中に知れる。行いと勲が揃っていれば、小僧の私が惹かれるのも当然」
黒騎士「まあ実際に本当に褒められたものではないのだ」
騎士「そうでなければ流浪の身で再度騎士号など与えられません」
黒騎士「まあ、それで領地を貰わなかった事は幸いではある」
騎士「流浪できないからですか?」
黒騎士「いや、そうではない。それより、君は今も制度だけでなく全てを俯瞰して行動できているか?」
騎士「もちろんです」
黒騎士「ならば良い。制度だけで救えない、力だけでも掬えない、知恵がなければ救えない。立場があるからこそ、判断を誤ってはならないのだ」
騎士「当然です。私だって、身に染みて思っております」
黒騎士「あの件か……。いい。失敗は取り戻せない。しかし、生きている以上次の失敗を防がねばならない」
騎士「そうですね。いつか、師である黒騎士殿に会わせたい男達がいます。癖はありますが気のいい奴らです」
黒騎士「良い仲間に恵まれたのだな……。心から祝福する。私で良ければいつでも会わせてくれ」

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Post-0160

聖騎士女「ん……?あそこにいるのは偽聖騎士か……?」

偽聖騎士「待て!少年は確かにパンを盗んだかもしれない!しかし理由を聞かずに殴るのが正しいとオレは思わない!」
少年「ご、ごめんよ。親がいなくなっちゃって、妹が腹を空かせてるんだ……」
パン屋「なら最初から言えよ」
偽聖騎士「金はオレが払おう。少年、行く当てはないのか?」
聖騎士女「失礼する。幸い、教会で孤児を世話しているシスターを知っている。少年が望むなら紹介できるが」
偽聖騎士「おや聖騎士女。キミの紹介なら安心だ」

聖騎士女「あそこにいるのは偽聖騎士……?」

偽聖騎士「貴族とは言え平民を斬るには正当な理由が必要だ!理由なく斬るならオレが代理で相手しよう!」
貴族「聖騎士とは言え逆らうならば容赦せぬぞ!」
偽聖騎士「オレは聖騎士ではない!しかしお相手する!」
聖騎士女「失礼する。私は正式な聖騎士だ。理由なく平民を斬るなら、貴族の論理ではなく神の論理で裁かねばならないが」
貴族「くっ、名に聞く聖騎士女か。命拾いしたな若造」
偽聖騎士「引くなら追わん」
聖騎士女「あなたの戦いを奪ってしまったな」
偽聖騎士「正しい結果が出るなら手段は問わない。キミが加勢してくれて助かった」

聖騎士女「行く先々に偽聖騎士がいるな……。何の巡り合わせだ……?」

偽聖騎士「見つけた!少年の両親を殺したのはお前らだな!これは天誅ではない、人誅だ!抜け!」
聖騎士女「判断が早すぎる。まるで戦士のようだ。この早さで行動されるとフォローが間に合わない……」
偽聖騎士「一閃!命は取らない。懺悔しろ」
聖騎士女「失礼する。官憲に突き出す前に話を聞かせて貰おう」
偽聖騎士「やあ聖騎士女。証人がいてくれると助かる」

聖騎士女「あなたはあまりにも判断が速い。しかし間違っているようにも見えない」
偽聖騎士「それは持っている力の違いだろう。オレは今腕力以外の力を持たない。だから大きな被害も出ない」
聖騎士女「それは、確かにそうかも知れない。私は加護があるが故に、まず被害範囲を考えてしまう」
偽聖騎士「それは責任のある考え方だし、全く悪くない。が、オレはその場で動けるフットワークがある」
聖騎士女「確かに。なるほど、あなたはやはり面白い」
偽聖騎士「ははは、引き続きがんばるよ。では!」

聖騎士女「神は彼にあえて加護を与えないのでは……?」

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Post-0159

騎士「思いが通じないというのは、心が痛むな」
僧侶「すみません、ご老人を持って頂き」
騎士「いや、構わない。ご老人の最期は立派だった」
僧侶「はい。ご老人は最後まで私を責めませんでした」
騎士「それがわかっているなら良い。ご老人が最後に渡したものは、少なくとも僧侶への呪詛ではなかった」
僧侶「はい」
騎士「っと、少年と衛士が揉めているな。少しご老人を任せてもいいだろうか」
僧侶「もちろんです。お受け取りします」

少年「だからお願い!助けて」
衛士「ごめんな、少年。その話だと見回りの方が優先なんだよ」
騎士「どうしたのだ?」
少年「あ、騎士様。いや、騎士様にはちょっと……」
衛士「すみません騎士様。なんでもないんです」
騎士「騎士とはいえ領土なき身。多少の願いは気安く聞けるぞ」
少年「あ、あのね。猫が木に登っちゃって降りてこられないんだ」
衛士「ね、これだと見回りを優先せざるを得なくて」
騎士「なるほどな。少年、猫を助けようと助けを呼ぶ判断は素晴らしい。そして衛士も見回りが優先なのは職務として当然だ。ただ少年、わかってくれ。衛士は君が困っている事をわからない訳ではない。ただ、仕事として君を助けるより優先しなければならない事があるという事なんだ」
少年「う……うん……そうだよね……」
騎士「が、偶然私がいる。衛士も今まさに私に頼もうとしているところだ。無論頼まれなくても私は助ける。少年が助けを求めようとした勇気に免じてだ」
少年「いいの!?」
騎士「が、私では役にたてそうもない。知り合いに身軽な男がいるから呼んでこよう。猫が落ちないようにだけ見張っていてくれ」

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Post-0158

戦士「ほら、見えてきた。俺の故郷だ。もう何もねえけど、村の真ん中の神像を飾ってた台座だけ残ってる」
盗賊娘「風の、気持ちいい村、だね……」
戦士「もう村じゃねえけどな」
蛮族娘「この、花?何?」
戦士「ああ、矢車花だな。風の通るところに生えるんだ」

少年「あ、矢車花だ。ねーちゃんに持って行こ!木の実も十分集まった!」
おばさん「あれ、少年。もう木の実集まったのかい?じゃあ焼き菓子焼いてあげようか?」
少年「ありがと!でも今日はねーちゃんに焼いて貰う!」
おばさん「そうかい。転ばないようにね」
少年「うん!あ、ガリ!こっちくんなよ!」
ガリ「はは、ごめんね、邪魔だったかな」
少年「邪魔だよ!俺より重い物を持てるようになってからねーちゃんの所に来いよ!」
ガリ「そうだね、頑張るけど、きっとそうなるからそれまでは見逃してくれないかい?」
少年「だーめ!ガリの作った神像は凄いけど、農民は身体が第一!」
ガリ「ははは、じゃあ今日から頑張るよ。またあとでね」
少年「もう来んな!」
姉「あれ、少年。ガリさんは?」
少年「見なかったよ。はい。木の実」
姉「ふふ。じゃあ、焼き菓子を焼きましょうか」
少年「さんせーい!」

若騎士「なんと、お嬢様を狙って刺客が……」
密偵「はい。縁談を断られた貴族様が、お嬢様がこの村に気分転換にお泊まりになる事を知って刺客を放たれたと」
若騎士「やむを得ない。私だって多少は腕に覚えがある。私がお嬢様を馬の後ろに乗せて急ぎお送りしよう」
密偵「お供します」

おばさん「あ、あれは山賊!なんでこんな貧しい村に……!」
農夫「い、いかん、皆逃げろ……!」

山賊「チンケな村だが女がいようが逃げようが皆殺しにすれば後金が貰える。前金だけで十分だが後金は3倍だ」
山賊「遊んでないで奪うだけ奪って皆殺しにしろ」
山賊「はは、貴族様の依頼はうま味があるな!」
山賊「まず逃げる奴から殺せ」

ガリ「姉!少年!隠れろ!山賊が来てる!逃げられない!」
姉「ガリさん!山賊が……!」
少年「隠れてて助かるわけないだろ!逃げるしか」
ガリ「今だけでいい、いう事を聞け!」
少年「ガリが……俺を、殴った!?」
ガリ「ねえさんと一緒に隠れていろ!僕は、山賊を向こうに誘導する!」
少年「そんな事したらガリは……」
ガリ「君と姉さんは生き延びろ!」
姉「ガリさん……。うん……ありがとう……」
少年「ねーちゃん?」
姉「少年、何があっても声を出さないで。このクローゼットは大人は入れない。だから、見つからない」
少年「ねーちゃん?嫌だよ、やめて、なんでそんなに力が強いの……?」
姉「いいから。お願い。絶対に声を出さないで」
(クローゼットの閉まる音)

姉「ガリさん……。あの声は……。ああ、ガリさん」
少年「ねーちゃん!?泣いてるのか!?」
姉「喋らないで!これから一言も!」

山賊「女か。時間がないから命だけ貰うぜ」
姉「こ、これが全財産です。差し出せるものはこれしかありません。ど、どうか助けて」
山賊「駄目だ」
山賊「家捜しするか?」
山賊「死んだ女が命乞いに全額出したろ。探すだけ無駄だ」
山賊「そうか。まあ火を放つしな」

おばさん「姉!少年!いるなら出てきて!火が回ってる!」
おばさん「ああ、姉ちゃん。なんて可哀想に」
おばさん「そこにいるんだね少年!開けるよ。目を閉じて!」
少年「……」
おばさん「見ないで。山賊が村に火を放ったの。誰もいない方向に逃げるわよ」
少年「おばさんだって血まみれだよ……大けがをしてる」
おばさん「いいの。あなたを助けるまで死なないから。さあ一緒においで」
少年「なんで、騎士様は助けてくれなかったの……?」
おばさん「わからない。考えるのは生き延びてからにしましょう……」

戦士(持ってきた酒を台座にかける)
戦士「ガリとねーちゃんのおかげで今日も生きてるよ……」
蛮族娘(黙って矢車花を台に供える)
盗賊娘「ねえ戦士……?」
戦士「ああごめんな。何か気になるものがあったか?」
盗賊娘「ううん……あんたが気になる」
戦士「ああ、ちょっと感傷に浸ってただけだよ。柄にもないな」
盗賊娘「ううん。誰にだって過去と傷はあるから、おかしくない……」
戦士「そうか」
盗賊娘「でも、戦士が人に寄り添ってくれるように、戦士に寄り添いたい人だって一杯いるよ……?」
戦士「そうか……」
盗賊娘「うん。今言って、っていうんじゃなくて、言いたくなったら言って」
戦士「今の俺と、盗賊娘と蛮族娘がいたら、今もここに村があったんだろうな……。今度、堀のパン屋で甘い物でも食いながら話をしようか。この話にはあの婆さんが必要だ」
盗賊娘「うん……」
蛮族娘「話、聞く。そのあと、焼き菓子、食べる!」
戦士「ああ、そうだな。約束だ」

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