Post-0164

魔法使い「詳しく話す前にまず、街ごと僕を殺すのではなく僕だけを殺すと誓って。これを使っていいから。人を巻き込まないでくれる?」
少女「意外と、肝が、座ってるねェ。まあ殺す手段は問わないよ。悪かないナイフ……この、紋章は……!?」
魔法使い「うん、見覚えがあるならお兄さんで間違いない。お兄さんの唯一の形見だから、まず返すよ」
少女「形見……。本当に、あのクズは死んだんだねェ……。こんな手がかりを回収せずに立ち去るようなマヌケじゃない、ねェ」
魔法使い「うん、詳しく話してもいい?」
少女「そうか……。じゃあ、クズの分はピアスを増やさなくていい……ねェ」
魔法使い「お兄さんについて、怒っているのに安心しているんだね。話し終わっても僕が生きていたら後で詳しく教えて。」

少女「つまり、あのクズは出会った時点で雌蜘蛛に憑かれていた、と。そして黄金の呪いに蝕まれ、聖騎士の手によって消滅した」
魔法使い「うん、経緯としてはそうだけど、お兄さんが消えた理由は僕らにある」
少女「あのクソ野郎をこの手で殺せなかったのは残念だけど、消えたならそれでいい、ねェ。これでクズとアタシの持っていた禁術は、アタシだけのものになった、ねェ」
魔法使い「ごめんね、禁術って、お兄さんの使っていた破城の鉄槌?あれなら詠唱を2回見て発動を1回見たから、多分僕同じ術使えるよ」
少女「はぁ?禁術の<能力複製>使わないで詠唱聞いただけで使えるっての……?」
魔法使い「うん……多分」
少女「あははははは!ア、アタシ達が殺し合って無理矢理引き出して集めている禁術を、お前は、見ただけで、ねェ……あはははは」
禁術娘「あはははは……死にな。詠唱破棄!<破城の鉄槌>!」
魔法使い「あわわ、<対抗呪文>!」
禁術娘「あはははは!<対抗呪文>で打ち消せるのは使える呪文だけだよ、ねェ。本当に使えやがる……」
魔法使い「やられました。範囲を絞って僕に当たらないように打つ事で<対抗呪文>を引き出しましたね……」
禁術娘「まあそういう一族だからね……。しかし困った。禁術使いは禁術を集める。相手が追ってこないように殺す。同じ禁術を複数が持つのはあらゆる意味で認められない、ねェ」
魔法使い「じゃあ、そうなっちゃう感じ、ですか……?」
禁術娘「構えなくていい。アタシはこんな下らない殺し合いは好きじゃない。襲いかかってくる相手には容赦できないが、そうじゃない相手をどうこうしようとも思わないよ、ねェ」
魔法使い「じゃあ、ちょっと安心してもいいんですよね……?」
禁術娘「アンタならこの舌ピアスに加えてあげてもいいんだけど、ねェ」

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Post-0161

黒騎士「君と最後に打ち合ってからどれくらいになるだろうな。随分名を上げたようだ」
騎士「いえいえ。黒騎士殿に師として教えを請うたからこそ、今の私があります」
黒騎士「主を定めず流浪に生きる私に教えを乞いに来た時には驚いたものだ」
騎士「いえ、黒騎士殿は誰よりも騎士として素晴らしい。主に悪意を向けた貴族を単身討伐し、責任として騎士号を返上された。誰にでもできる事ではない」
黒騎士「はは、なるほど、剣の腕ではなく行いを見ての事だったのか。その行いも褒められたものではないが」
騎士「何を仰るか。黒騎士殿の勲は王国中に知れる。行いと勲が揃っていれば、小僧の私が惹かれるのも当然」
黒騎士「まあ実際に本当に褒められたものではないのだ」
騎士「そうでなければ流浪の身で再度騎士号など与えられません」
黒騎士「まあ、それで領地を貰わなかった事は幸いではある」
騎士「流浪できないからですか?」
黒騎士「いや、そうではない。それより、君は今も制度だけでなく全てを俯瞰して行動できているか?」
騎士「もちろんです」
黒騎士「ならば良い。制度だけで救えない、力だけでも掬えない、知恵がなければ救えない。立場があるからこそ、判断を誤ってはならないのだ」
騎士「当然です。私だって、身に染みて思っております」
黒騎士「あの件か……。いい。失敗は取り戻せない。しかし、生きている以上次の失敗を防がねばならない」
騎士「そうですね。いつか、師である黒騎士殿に会わせたい男達がいます。癖はありますが気のいい奴らです」
黒騎士「良い仲間に恵まれたのだな……。心から祝福する。私で良ければいつでも会わせてくれ」

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Post-0160

聖騎士女「ん……?あそこにいるのは偽聖騎士か……?」

偽聖騎士「待て!少年は確かにパンを盗んだかもしれない!しかし理由を聞かずに殴るのが正しいとオレは思わない!」
少年「ご、ごめんよ。親がいなくなっちゃって、妹が腹を空かせてるんだ……」
パン屋「なら最初から言えよ」
偽聖騎士「金はオレが払おう。少年、行く当てはないのか?」
聖騎士女「失礼する。幸い、教会で孤児を世話しているシスターを知っている。少年が望むなら紹介できるが」
偽聖騎士「おや聖騎士女。キミの紹介なら安心だ」

聖騎士女「あそこにいるのは偽聖騎士……?」

偽聖騎士「貴族とは言え平民を斬るには正当な理由が必要だ!理由なく斬るならオレが代理で相手しよう!」
貴族「聖騎士とは言え逆らうならば容赦せぬぞ!」
偽聖騎士「オレは聖騎士ではない!しかしお相手する!」
聖騎士女「失礼する。私は正式な聖騎士だ。理由なく平民を斬るなら、貴族の論理ではなく神の論理で裁かねばならないが」
貴族「くっ、名に聞く聖騎士女か。命拾いしたな若造」
偽聖騎士「引くなら追わん」
聖騎士女「あなたの戦いを奪ってしまったな」
偽聖騎士「正しい結果が出るなら手段は問わない。キミが加勢してくれて助かった」

聖騎士女「行く先々に偽聖騎士がいるな……。何の巡り合わせだ……?」

偽聖騎士「見つけた!少年の両親を殺したのはお前らだな!これは天誅ではない、人誅だ!抜け!」
聖騎士女「判断が早すぎる。まるで戦士のようだ。この早さで行動されるとフォローが間に合わない……」
偽聖騎士「一閃!命は取らない。懺悔しろ」
聖騎士女「失礼する。官憲に突き出す前に話を聞かせて貰おう」
偽聖騎士「やあ聖騎士女。証人がいてくれると助かる」

聖騎士女「あなたはあまりにも判断が速い。しかし間違っているようにも見えない」
偽聖騎士「それは持っている力の違いだろう。オレは今腕力以外の力を持たない。だから大きな被害も出ない」
聖騎士女「それは、確かにそうかも知れない。私は加護があるが故に、まず被害範囲を考えてしまう」
偽聖騎士「それは責任のある考え方だし、全く悪くない。が、オレはその場で動けるフットワークがある」
聖騎士女「確かに。なるほど、あなたはやはり面白い」
偽聖騎士「ははは、引き続きがんばるよ。では!」

聖騎士女「神は彼にあえて加護を与えないのでは……?」

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Post-0159

騎士「思いが通じないというのは、心が痛むな」
僧侶「すみません、ご老人を持って頂き」
騎士「いや、構わない。ご老人の最期は立派だった」
僧侶「はい。ご老人は最後まで私を責めませんでした」
騎士「それがわかっているなら良い。ご老人が最後に渡したものは、少なくとも僧侶への呪詛ではなかった」
僧侶「はい」
騎士「っと、少年と衛士が揉めているな。少しご老人を任せてもいいだろうか」
僧侶「もちろんです。お受け取りします」

少年「だからお願い!助けて」
衛士「ごめんな、少年。その話だと見回りの方が優先なんだよ」
騎士「どうしたのだ?」
少年「あ、騎士様。いや、騎士様にはちょっと……」
衛士「すみません騎士様。なんでもないんです」
騎士「騎士とはいえ領土なき身。多少の願いは気安く聞けるぞ」
少年「あ、あのね。猫が木に登っちゃって降りてこられないんだ」
衛士「ね、これだと見回りを優先せざるを得なくて」
騎士「なるほどな。少年、猫を助けようと助けを呼ぶ判断は素晴らしい。そして衛士も見回りが優先なのは職務として当然だ。ただ少年、わかってくれ。衛士は君が困っている事をわからない訳ではない。ただ、仕事として君を助けるより優先しなければならない事があるという事なんだ」
少年「う……うん……そうだよね……」
騎士「が、偶然私がいる。衛士も今まさに私に頼もうとしているところだ。無論頼まれなくても私は助ける。少年が助けを求めようとした勇気に免じてだ」
少年「いいの!?」
騎士「が、私では役にたてそうもない。知り合いに身軽な男がいるから呼んでこよう。猫が落ちないようにだけ見張っていてくれ」

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Post-0158

戦士「ほら、見えてきた。俺の故郷だ。もう何もねえけど、村の真ん中の神像を飾ってた台座だけ残ってる」
盗賊娘「風の、気持ちいい村、だね……」
戦士「もう村じゃねえけどな」
蛮族娘「この、花?何?」
戦士「ああ、矢車花だな。風の通るところに生えるんだ」

少年「あ、矢車花だ。ねーちゃんに持って行こ!木の実も十分集まった!」
おばさん「あれ、少年。もう木の実集まったのかい?じゃあ焼き菓子焼いてあげようか?」
少年「ありがと!でも今日はねーちゃんに焼いて貰う!」
おばさん「そうかい。転ばないようにね」
少年「うん!あ、ガリ!こっちくんなよ!」
ガリ「はは、ごめんね、邪魔だったかな」
少年「邪魔だよ!俺より重い物を持てるようになってからねーちゃんの所に来いよ!」
ガリ「そうだね、頑張るけど、きっとそうなるからそれまでは見逃してくれないかい?」
少年「だーめ!ガリの作った神像は凄いけど、農民は身体が第一!」
ガリ「ははは、じゃあ今日から頑張るよ。またあとでね」
少年「もう来んな!」
姉「あれ、少年。ガリさんは?」
少年「見なかったよ。はい。木の実」
姉「ふふ。じゃあ、焼き菓子を焼きましょうか」
少年「さんせーい!」

若騎士「なんと、お嬢様を狙って刺客が……」
密偵「はい。縁談を断られた貴族様が、お嬢様がこの村に気分転換にお泊まりになる事を知って刺客を放たれたと」
若騎士「やむを得ない。私だって多少は腕に覚えがある。私がお嬢様を馬の後ろに乗せて急ぎお送りしよう」
密偵「お供します」

おばさん「あ、あれは山賊!なんでこんな貧しい村に……!」
農夫「い、いかん、皆逃げろ……!」

山賊「チンケな村だが女がいようが逃げようが皆殺しにすれば後金が貰える。前金だけで十分だが後金は3倍だ」
山賊「遊んでないで奪うだけ奪って皆殺しにしろ」
山賊「はは、貴族様の依頼はうま味があるな!」
山賊「まず逃げる奴から殺せ」

ガリ「姉!少年!隠れろ!山賊が来てる!逃げられない!」
姉「ガリさん!山賊が……!」
少年「隠れてて助かるわけないだろ!逃げるしか」
ガリ「今だけでいい、いう事を聞け!」
少年「ガリが……俺を、殴った!?」
ガリ「ねえさんと一緒に隠れていろ!僕は、山賊を向こうに誘導する!」
少年「そんな事したらガリは……」
ガリ「君と姉さんは生き延びろ!」
姉「ガリさん……。うん……ありがとう……」
少年「ねーちゃん?」
姉「少年、何があっても声を出さないで。このクローゼットは大人は入れない。だから、見つからない」
少年「ねーちゃん?嫌だよ、やめて、なんでそんなに力が強いの……?」
姉「いいから。お願い。絶対に声を出さないで」
(クローゼットの閉まる音)

姉「ガリさん……。あの声は……。ああ、ガリさん」
少年「ねーちゃん!?泣いてるのか!?」
姉「喋らないで!これから一言も!」

山賊「女か。時間がないから命だけ貰うぜ」
姉「こ、これが全財産です。差し出せるものはこれしかありません。ど、どうか助けて」
山賊「駄目だ」
山賊「家捜しするか?」
山賊「死んだ女が命乞いに全額出したろ。探すだけ無駄だ」
山賊「そうか。まあ火を放つしな」

おばさん「姉!少年!いるなら出てきて!火が回ってる!」
おばさん「ああ、姉ちゃん。なんて可哀想に」
おばさん「そこにいるんだね少年!開けるよ。目を閉じて!」
少年「……」
おばさん「見ないで。山賊が村に火を放ったの。誰もいない方向に逃げるわよ」
少年「おばさんだって血まみれだよ……大けがをしてる」
おばさん「いいの。あなたを助けるまで死なないから。さあ一緒においで」
少年「なんで、騎士様は助けてくれなかったの……?」
おばさん「わからない。考えるのは生き延びてからにしましょう……」

戦士(持ってきた酒を台座にかける)
戦士「ガリとねーちゃんのおかげで今日も生きてるよ……」
蛮族娘(黙って矢車花を台に供える)
盗賊娘「ねえ戦士……?」
戦士「ああごめんな。何か気になるものがあったか?」
盗賊娘「ううん……あんたが気になる」
戦士「ああ、ちょっと感傷に浸ってただけだよ。柄にもないな」
盗賊娘「ううん。誰にだって過去と傷はあるから、おかしくない……」
戦士「そうか」
盗賊娘「でも、戦士が人に寄り添ってくれるように、戦士に寄り添いたい人だって一杯いるよ……?」
戦士「そうか……」
盗賊娘「うん。今言って、っていうんじゃなくて、言いたくなったら言って」
戦士「今の俺と、盗賊娘と蛮族娘がいたら、今もここに村があったんだろうな……。今度、堀のパン屋で甘い物でも食いながら話をしようか。この話にはあの婆さんが必要だ」
盗賊娘「うん……」
蛮族娘「話、聞く。そのあと、焼き菓子、食べる!」
戦士「ああ、そうだな。約束だ」

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Post-0157

騎士「戦士が不在だと酒場が静かすぎて違和感があるな。こういう時は散歩が一番だ」
騎士「む……。僧侶と、倒れているのは時々神殿に石を投げているご老人ではないか。なぜ僧侶はすぐ助けないのだ……?」

僧侶「お願いです、あなたを癒やす許可を」
老人「断る。私が神にすがらず一人で死ぬ事を邪魔するな」
僧侶「違うのです。神ではない。愚かだったのは私なのです」
老人「違わない。神は私から孫を奪い、お前は首を返した」
僧侶「そう、だから私の責任なのです」
老人「違う。それは正しい判断の結果だ。なら、そんな世界を許したのは神だ」
僧侶「それでも、私は、あなたに償いをできていない」
老人「償うべきはお前ではなく神だ。私はこのまま神を呪って死ぬ。邪魔をするな」
僧侶「私には、嫌がるあなたを無理矢理癒やす事ができない」
老人「お前を通してしか癒やせないのであれば、それが神の償いだ。無能なのはお前ではなく神だ」
僧侶「人のために神がいるのではなく、神のために人がいる。しかし、それでは、私達は……!」
老人「お前だけは孫を覚えていてくれ」
僧侶「無論です、一生。一生忘れません」
老人「神ではなく、お前に穏やかな最後を貰った。お前には礼を言う」
僧侶「礼などいいですから、どうか、あなたの生を長らえさせて下さい」
老人「断る……さらばだ……」
僧侶「ああ……神にすら祈る事ができない」
騎士「すまん、聞いてしまった。ご老人の遺骸を運ぼう」
僧侶「あ、騎士さん……」
騎士「言わなくていい。ただ、ご老人はお前を許した。事実はそれだけだ」

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Post-0154

聖騎士女「盗賊娘がいないと、なんというか、風穴が開いたような気持ちになるな」
剣士「そうですね。ただ、まあ、蛮族娘さんと一緒にいるときは本当に子供のように笑う。だから、いいのではないですか?」
術士「お前神殿に仕えてなかったらいいパパになったろうにな」
剣士「はは、あんなに素直な子がいてくれるなら、きっと世の中の親というのは幸せなのだろうな」
術士「そうかね。幸せに生きて神にたどり着く奴もいるし、地獄の中で神にすがるものもいる。思い込みが一番危ないんじゃねえかな」
剣士「す、すまん。あまりにも雑な物言いだった」
術士「いいよ。少なくとも俺は今毎日が楽しい」
聖騎士女「ん……?向こうで騒ぎが起きてる。急ごう」

偽聖騎士「借金のカタに子供を連れて行くなんて、人が許しても神が許さん!抜け!」
悪徳商人「聖騎士の鎧……。しかし加護を撃つ前に畳みかければ!行け手下ども」
手下「うぉー!」
偽聖騎士「オレには加護はない!天誅ではなく人誅だ!」
剣士「凄い技術だ。私とも戦士君とも騎士殿とも違う。膂力を完全に流れで活かしている」
術士「が多勢に無勢だな。偽物みたいだが助けるか?」
聖騎士女「格好ではなく行いで判断すべきだ。が、私一人で十分だ。そこの人、合わせる」
偽聖騎士「ありがたい!オレは左から右へ、キミは逆を頼む。キミは女性だが守る方が失礼だ」
聖騎士女「そのように言ってくれるのは嬉しいな。10手詰みだ。まず1手」
偽聖騎士「お上手。では2手3手」
悪徳商人「聖騎士が2人……。あまりにも強い。お前らはそこで時間を稼げ!」
剣士「ようこそこちらへ。怪我をしない程度に、お相手しましょうか」
術士「こいつはちょっとスネてるんでな。運がなかったな」

偽聖騎士「ふぅ、誰も怪我せず鎮圧できた。協力してくれてありがとう」
聖騎士女「礼には及ばない。失礼だが、その鎧は聖騎士にのみ与えられるもの。あなたも同じく聖騎士という認識で良いか?」
偽聖騎士「いや、オレは加護を与えられていない。だから聖騎士ではない。が、この鎧は死んだ聖騎士から譲られたもの、正式にオレのものだ」
聖騎士女「そうか、失礼した」
偽聖騎士「……怒らないのか?神に認められて初めて身につけられる鎧を、聖騎士でないオレが身につけていて。キミも血のにじむ努力の上で聖騎士になったのだろう?」
聖騎士女「努力したのは私が望んでの事だ。それで誰かを責める権利がある訳でもない。鎧が奪ったものではなく譲られたものであれば責める道理がない」
偽聖騎士「ありがとう。キミのような聖騎士を見たのは初めてだ」
聖騎士女「まあ私も変わり者だからな。それよりも今の詳しい話を聞かせて貰えるだろうか」

偽聖騎士「と言う訳で、あの悪徳商人が無理矢理金を貸しては剥がして子供を連れ去っていた。それを誰もとがめる事ができなかった」
聖騎士女「責めるな。強くない事を怒るのは強者の驕りだ」
偽聖騎士「もちろんだ。だからこその放浪者だ。オレにしかできない事を、今日オレはした」
聖騎士女「立派だ。神ならぬ私にはわからないが、あなたは必要な物を備えていると思う」
偽聖騎士「はは、本物に認めて貰うのはくすぐったいな。だが、オレもいつか加護を得て人を救う本物になるために修行を続けていくよ」
聖騎士女「そうなる事を願っている。もし何かあれば、私達の酒場を訪ねてくれ」
偽聖騎士「ああ、助かるよ。いい女だな」
聖騎士女「真顔でそう言ってくれる人間は初めてかもしれないな」

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Post-0152

騎士「うむ。久々に黒騎士殿に誘われて少し飲み過ぎてしまったか。馬車ではなく歩いて帰ろう」
騎士「む……?煙が上がっている。焚き火の煙ではないな。急ごう」

騎士「貴族の屋敷の離れが燃えている。いかんな、下働きの者の住居だろう。すぐに助けねば」
少年「お願いだ、通してくれよ!ねえちゃんが、ねえちゃんが中にいるんだ……!」
門番「すまんが通せない。潜入を企んで放火している可能性がある」
少年「頼む、頼むよ!俺の、ただ一人のねえちゃんなんだ!誰より優しい、俺の……どけよ!」
騎士「少年、駄目だ。門番は君を斬らざるを得なくなる」
少年「お前も敵なのか!」
騎士「違う!門番、私は騎士。かつて第三王子に仕えた騎士だ。身元に不安はない。通るぞ」
門番「しかし……!」
騎士「私が通っても君達の問題ではない。君達は私の身分に逆らえなかった。いいね」
少年「あんた……」
騎士「我々の身分があるのは、それで解決すべき問題を解決するためのものだ。私に任せてくれ。この通り、頼む」
騎士「私はもう制度を理由に人の思いを踏みにじりたくない」
少年「騎士様が頭を……。う、うん。絶対ねえちゃんを助けてくれ」
騎士「全力を尽くす。では参る!」
門番「おい、壁ぶち抜いていったぞ」

少年「ねーちゃん!」
姉「ありがとうね。騎士様が、あなたが騎士様を呼んだんだって言ってくれたよ」
少年「そんなことないよ。騎士さんは?」
門番「貴族様に詫びたいと中に入って行かれたよ。あんな人いるんだな」

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Post-0150

僧侶「シスター、お布施を持って参りました、どうぞお受け取り下さい」
シスター「感謝します。僧侶さんもご無理をなされませんように」
僧侶「月が……昇って、来ましたね」

ナンバー2「新入りかい。お前は狂えるか?人を救う神を称えながら、神の手から零れたものを刈り取る、その狂気をお前は持てるか?」
聖堂騎士「持てません。私は人を害する事を人を救うために必要だと美化する気はありません」
ナンバー2「そうか。じゃあ出て行け。お前はいつか人ではなく自分を殺す。命令以外で死ぬ猟犬は必要ない」
聖堂騎士「しかし、必要から逃げることもしません」
ナンバー2「あたし達は月なんだよ。大司教が太陽なら、あたし達は太陽にかき消される月。太陽がいない間だけ罪人を裁く夜の女王だ」
聖堂騎士「あなたのように、ですか?」
ナンバー2「茶化して貰って構わない。狗は自分の評価を気にしない」
聖堂騎士「一人の騎士として、狗というのは流石に」
ナンバー2「この仕事は結果が全て。誇りなんかを大事にするならそれこそこの仕事に向いていない。死ぬ前に、帰りな」
聖堂騎士「いえ、他の聖堂騎士にこのような仕事はさせられません」
ナンバー2「……ならせめて約束しな。殺すか死ぬかの時、常に殺す事を選ぶと。神とあたしにここで誓え」
聖堂騎士「喜んで。苛烈なる夜の女王」
ナンバー2「次に同じ事を真顔で言ったら顔を踏むよ」

シスター「全ての人生が、切れる事なく続いています。あなたにも加護がありますよう」
僧侶「シスターこそ、もう戻らずに済みますよう」
シスター「さあ子供達、僧侶さんがお菓子を持ってきてくれましたよ。お礼を言って一緒に食べましょう……?」

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Post-0147

少女「すみませーん」
盗賊「ん?依頼に来てる感じでもないな?何の用だお嬢ちゃん、ここは俺みたいな危ない奴もいるぞ」
少女「……?危ないの?」
盗賊「危ないぞ」
少女「うん。僧侶さんいますか?」
戦士「あっはっは、全然怖がられてねえ」
盗賊「お前の顔見ても泣かないな」
少女「僧侶さん、いますか?」
戦士「ごめんごめん。上で休んでるから呼んでくるよ」

聖堂騎士「わ、私は何を守るために……」
(重い物が落ちる音)
ナンバー2「せめて恐怖から解放してやれ」
ナンバー1「邪神が降臨すれば世界が滅ぶ。余すことなく全員だ」
町民「聖堂騎士様、ご加護を」
町娘「ウチによって一杯飲んで来なよ。もちろん奢るよ!」
少年「俺も将来聖堂騎士に!」
少女「あのね、お花摘んだの。聖堂騎士様に、あげる」

僧侶「……はっ!ゆ、夢……」
戦士「おう邪魔するぞ。かわいこちゃんが呼んでるぜ。あと、顔洗ってから降りろ」
僧侶「す、すみません」

戦士「ほら、おじさんが降りてきた」
僧侶「どうもこんにちは、って、あのときの子ですね」
少女「僧侶さん、お母さんを治してくれてありがとう。お礼を持ってきたの」
僧侶「これは可憐なお花ですね。とっても嬉しいです」
少女「どうもありがとう」
僧侶「神はどんなときでも皆さんを見守ってくれていますよ。いつでも神を頼って下さいね」
少女「ありがとう。じゃあねー」
僧侶「では、さようなら」
戦士「……また泣いてるのか」
僧侶「私は、こういう、世界を、続けたいんです。ずっと」
戦士「そうなるように、お互い頑張ろうな」

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