Post-0179

聖騎士女「む……?男性が泣きわめきながら走っている。助けねば。おーい男性!」
偽聖騎士「まかせろ!男性、何から逃げているんだ!?オレが引き受ける!」
男性「た、助けて……!アイツが、アイツが追ってくる……!」
偽聖騎士「アイツ?誰だ!?」
男性「だ、駄目だ。みんなやられた。見えない所から襲われる……!」
聖騎士女「遠隔呪文だ!この時間に蝙蝠など飛んでいるはずもない!目を潰す!」
偽聖騎士「投げナイフ!お見事!」
男性「うわぁぁぁぁぁ!」
聖騎士女「間に合わなかった……身体の内側から無数の棘が……!むごい……」
偽聖騎士「すまない、助けられなかった……」
男性「ああああああ!ああああああ!ああああああ!」
偽聖騎士「動ける、のか……?信じられん」
男性「ま……魔術師に……<消滅>を……」
聖騎士女「わかった。即死でないなら僧侶に治して貰いながら魔法使いに棘を消滅させて貰えるはずだ」
偽聖騎士「死なない傷ではない。後で話を聞かせて貰うよ」

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#ちょっとズレてるお人好しども
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Post-0175

魔法使い「では、詳しいお話を……。っていうか皆さんお酒持ってますね」
僧侶「ただいま戻りました。今日は一つ笑顔を守れたいい日になりました」
戦士「お、お帰り。せっかくだから飲んじまうか。そっちの子はイケる口?」
禁術娘「めちゃくちゃ緊張感ないねェ」
騎士「常に張り詰めているといつか切れるからな。張り詰めずに網を張っておくのが冒険者だ」
禁術娘「アハハ、お見事。せっかくだから、貰おうか、ねェ。禁術娘って呼んでいいよ」
戦士「よろしくな、禁術娘。じゃ、カンパーイ!」
魔法使い「あれ?ああ、あの時ぶりです、呪術女さん」
呪術女「……!?し、失礼、つい、夢中に」
蛮族娘「呪術女、甘い物、大好き。夢中に、なる」
盗賊娘「おいしかったもんね、あのパイ。もう一個食べたかったなぁ……」
看板娘「はいよ!ちょっとお高いよ!なにせ時価だからね!」
術士「あるだけ持ってきてくれ。蛮族娘も呪術女もおかわりいるだろ?そっちの子は?」
看板娘「まいどー!」
禁術娘「……」
盗賊「だから、全員、油断はしてねえって。左手にあるその粉、ろくな効果じゃないんだろ?」
騎士「そこまで我々を試して、何がしたいのだ?もちろん魔法使いが連れてきた客人、可能な限り助力はするが、あまり試されても気分が良いものではない」
禁術娘「わかった。アンタらのその感度なら確かにアタシの兄、禁術使いを倒せる。破術争奪戦でも上位の男をだ」
戦士「禁術使い……?聞いた事ねえ名前だな」
騎士「いや、銀騎士殿が取り調べで答えていた。辺境にいたあの魔術師だな。であれば、我々は倒してない」
禁術娘「……は!?」
盗賊「あの魔術師を倒したのは、お前の横にいるまほクンと、そっちでパイ食ってる呪術女の2人だよ」
禁術娘「二人で……?」
魔法使い「厳密にいうと僕も主戦力じゃないです。主にあっちの呪術女さんのお手柄です」
禁術娘「あそこでパイ食ってる……?隙だらけじゃないか……」
戦士「酒場で飛び道具を投げるのはナシだ」
魔法使い「呪術女さんは歌のプロフェッショナルです。肉弾戦では計れないですよ」
禁術娘「ちょっと、待ってよ、ねェ。クソ下らない破術争奪戦を終わらせる手伝いを頼みたいんだ。誰に頼めばいいんだい……?」
魔法使い「大丈夫です。みんな、協力してくれます」
禁術娘「油断すると破術をぶち込まれるとんでもない依頼なんだよ……?」
魔法使い「頼まれなくても、禁術娘さんのそばにいるならぶち込まれる可能性があるんでしょう?なら、終わらせましょう?」
盗賊娘「ごめんね、詳しく聞かないとなんとも言えないけど、あなたのそばにいる事で誰かが怪我したり死んだりするなら……」
戦士「悪いのはお前じゃなくて、ちょっかいかけてくる奴だよな」
盗賊娘「だから、こう言うよ。『そんな奴はぶっ飛ばせばいい』って」
禁術娘「参った。修羅場くぐってるのはアタシだけじゃないんだ、ねェ。とりあえず、そのパイ貰おうか」
蛮族娘「パイ、美味しい!」
禁術娘「アハハ、落ち着いて甘い物なんて食うの、もういつぶりか覚えていないよ、ねェ……」

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Post-0174

魔法使い「ただいま、かえりましたー。戦士さんにプレゼントの前に、もう一人お呼びしていいですか……?」
戦士「お前がモジモジするのも大分慣れてきたからな。男の子?女の子?」
魔法使い「あははー。女の子です。禁術娘さん、どうぞー」
禁術娘「どうもこんにちわー。まほクンにナンパされてついてきましたー」
騎士「おっと。魔法使いが……」
魔法使い「あわわ、そうじゃなくて……」
禁術娘「まほクンったら強引で、無理矢理迫ってきて、女の子が決して人に見せないところまで見られちゃって……責任とってもらわないと……」
戦士「魔法使い、そういうのは男らしいっていうのとはちょっと違うと思うぞ」
盗賊「はは……、っと、手のひらに隠してる千枚通しをしまえ。顎から通すと脳に届く」
禁術娘「アハハ、バレちゃった。どれくらいの実力か見てやろうと思ったんだけど、ねェ」
戦士「いや、みんな気づいてたぞ。あまりにも殺気が露骨すぎる」
騎士「しかしそれを見逃す魔法使いでもない。つまり、試すだけのつもりで敵意はないのだろう?」
禁術娘「あー、このレベルが複数なら、あのクズでも舐めてかかればひっくり返るねェ……」
盗賊「あのクズ?」
禁術娘「アタシが殺そうと思っていた兄貴を消してくれたんだから、お詫びに言う事を聞いて貰おうと思って……ねェ?」
騎士「詳しく話して貰えるだろうか……?」
禁術娘「もちろん。雑魚に話すと命の危険を呼ぶが、アンタらなら話しても大丈夫そうだ。なら味方は多い方がいい」

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Post-0173

魔法使い「オリジナルの禁術を知る最後の一人は死なない事はわかりました。だから、もう痛い事を自分にしないでください」
禁術娘「優しいんだ、ねェ。そういう奴は早く死ぬ」
魔法使い「まあ、誰だって死ぬまでは『今まで死んでいないから』って言ってますよね。言えなくなった時点で言える状態にもないですし」
禁術娘「アハハ、確かに普通は1回しか死ねないから、ねェ」
魔法使い「オリジナル禁術を持っている事によって『死なない』っていうの、かなりのアドバンテージですよね。なぜお兄さんは不死にならなかったんでしょう?」
禁術娘「アハハ、それも簡単だよ。例えば禁術持ちを破城の鉄槌で消す、と、手足のない胴体が地面に落ちる。確かに死んではいない、ねェ」
魔法使い「なるほど。その状態で捕まれば、手足がゆっくり再生しても逃げられない」
禁術娘「そう。そこから逃げられない尋問がゆっくり始まる。だからクズは実質詰むなら不死にこだわる必要がないと、判断したんだろう、ねェ」
魔法使い「そう考えるとひどい仕組みですね。他を殺せば自分が不死になる。奪うために聞き出して、それによって不死が解け、殺される事で奪った側が不死になる」
禁術娘「悪意しか感じない、ねェ。でも、禁術持ちはみんな全ての禁術を集めて破術の主を目指す。全ての破術を持つ唯一の命ある不死になるために」
魔法使い「なるほど、本来不死は負の生命力でしかありえない。それを生きながら達成し、全ての破術を手に入れる事で絶大な力を持てる」
禁術娘「それに、ねェ。全ての破術を集めて破道を復元すれば、今の魔術から意図的に取り除かれた、魔道の神髄を知る事ができるんだそうだよ、ねェ」
魔法使い「魔術、ではなく、魔道……。魔法学院ですらタブーとされる原初の魔術……。とんでもないですね。あまりにも魅力的すぎる」
禁術娘「だよねェ、アンタには、ね。せっかく破術を手に入れたんだ、参加するかい?」
魔法使い「いいえ。殺し合いの末にそんな物を手に入れても意味がありません。正しい知識は正しく手に入れなければ」
禁術娘「いい判断だ、ねェ。今参加したら、この場でアンタを殺すしかなかった。舌ピアスにするのはまた今度にしよう、ねェ」

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Post-0171

呪術女『久しぶりだな蛮族娘。我も王国に招かれた。邪魔でなければここに滞在したい』
蛮族娘『久しぶり、呪術女。オレは熊の皮を得て熊の勇者になった』
呪術女『それは喜ばしい。母熊の如く、弱き者を守れるようになったのだな』
蛮族娘『いや、雄叫びと共に意識を失う』
呪術女『なら、それはまだ仮初めの力。個で守り、群れで攻めるが勇者。お前はまだ守れていない』
蛮族娘『なら、もっと修行するよ』
呪術女『我は勇者ではない。故に教えられない。励め』
蛮族娘『もちろん!』

盗賊娘「蛮族娘、嬉しそう」
盗賊「まあ、普段魔法使い以外に言葉通じないしな」
盗賊娘「私ももうちょっと頑張って言葉覚えよう……」
術士「凄く良い事だな。聖騎士女も辺境の言葉上手いから習うといい」
盗賊「ところで呪術女、王国領に何か用事があったのか?よしみだ、何でも手伝うぞ」
呪術女「我、魔法学院、呼ばれた。我らの、呪術、は、魔法、と、違う、が、研究したい、と」
盗賊「なるほど、魔法使いのやってたアレだな」
呪術女「かわりに、我、魔法、学ぶ。魔法使い、我に、呪術、と、魔術、組み合わせる、見せて、くれた」
術士「はははは!なるほどな、魔法学院がやりたい事を呪術女もしたい。完全に対等だ」
呪術女「我ら、辺境開いた、役割、終えた。でも、我ら、生きる。生きる、には、目的、が、必要」
盗賊娘「そうだね……。生きるために生きるだけじゃなく、何か『したい』があるといいよね」
蛮族娘「オレ、強い、勇者、なる、目的!でも、盗賊娘、仲良い、も、目的!」
盗賊娘「ありがとう、凄く嬉しい。わたしも蛮族娘と一緒にいたいよ」

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Post-0170

魔法使い「禁術を知る最後の者は死なない……?でも、破城の鉄槌にはそんな術式は組み込まれていません」
禁術娘「そうだろう、ねェ。そんなのは誰だってわかる。でも、これでどうだい?特別にいいものを見せてあげるよ、近寄りな」
魔法使い「だ、駄目です、胸元をめくっちゃ」
禁術娘「そんな所よりもっといい物を見せてあげるよ。ほら」
魔法使い「ナイフで胸を……!?いけない、抜かないで。僧侶さんを呼んできます」
禁術娘「ほら、よく見なって。心臓を、こうやって、かき回しても、死なない……ねェ?」
魔法使い「まさか、信じられない」
禁術娘「手品とか疑われてもつまらないからさ。見える、よ、ねェ?ぐずぐずの心臓が、治っていく……」
魔法使い「は、はい。傷も治っていく……。という事は、禁術娘さんは破城の鉄槌以外のオリジナル禁術を持っているんですね」
禁術娘「話が早い。アタシは死なないがアンタは死ぬ。今のところね」
魔法使い「どうしても不思議です。呪文の効果なら呪文に術式が載っているはず」
禁術娘「死なない結果が人に狙われ、術式をゲロしたら殺され、なんなら不死を求める輩にも狙われる。ほぼ呪いだ、ねェ」
魔法使い「うーん。どうしても納得がいかないです……。例えば破城の鉄槌にしても攻勢魔法としておかしい点があります……」
禁術娘「ほう、例えば?」
魔法使い「破城の鉄槌は効果範囲を地面以外全て消し去る術式です。ですが攻勢魔法なら地面もえぐれないと地下の敵が倒せない。これじゃまるで地ならしの魔法だ」
禁術娘「ははッ!最短で答えにたどり着いたね。そう、破術は全部強すぎるだけの便利魔法だ。まあ悪用した方が効果が高いが、ねェ」
魔法使い「……!使い方が問題になるから、封印されたのか……!」
禁術娘「そりゃそうだよ、ねェ。禁術所持による不死がどこまでかを確認するために妹で散々実験するようなクズが求める魔法だ。正しくなんか使わない、ねェ」
魔法使い「そんな事を……」
禁術娘「そりゃあ痛いのにも慣れるよ、ねェ」
魔法使い「それは、ちょっとどころではなく、許せません」
禁術娘「まあそれをやったクズは死んだけど、ねェ」
魔法使い「それについては本当に……」
禁術娘「いいよ、別に。それに、本当は痛いのにはまだ慣れてないし、ねェ」

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Post-0169

盗賊娘「熊の力は、危ないよ……?」
蛮族娘「熊の力、練習、必要。力、熊の皮、外す、なくなる。盗賊娘、熊の皮、取れる」
盗賊娘「うん、絶対じゃないけど、多分、できるよ」
蛮族娘「盗賊娘、も、勇者。オレ、安心。その前に」
盗賊娘「あれ、これ熊のなめし皮?」
蛮族娘「熊の頭、被る。盗賊娘、お揃い、喜ぶ」
盗賊娘「そうだね、お揃いだね。似合うかな……?」
蛮族娘「完全な、勇者。見とれる」
盗賊娘「えへへ」
蛮族娘「勇者、勇者、止められる。オレ、悪さ、我慢、する。もし、オレ、止める、任せた」
盗賊娘「うん、わかった」

盗賊「ただいま。猫のおもりで木に登る羽目になった」
術士「どうも。そろそろ盗賊娘が帰って……きてるな。お帰り。楽しかったか?」

蛮族娘「ぐらぁーう゛ぁー!」
盗賊「おい、蛮族娘薄く光ってるぞ!?」
盗賊娘「あ、あれ……?」
術士「おい、盗賊娘も光って……こっちに向かってくる!?」

盗賊「おっと、術士は肉弾戦無理なんだ。こっちに来てくれ」
術士「焦点合ってないし目が血走ってるぞ!とりあえず寝かせる!<眠り>!……って寝ないだと!?」
盗賊「おいおい神殿術士レベルの魔法で寝ないのかよ……、って蛮族娘はまだしも盗賊娘が早くて力が強い……!これは厄介だ!」

呪術女「熊の皮、外せ」

盗賊「助かる!」
術士「すれ違いざまに熊の皮を『盗む』。さすが盗賊」

蛮族娘「……。悪さ、我慢する、できなかった」
盗賊娘「……。一瞬目の前が真っ白になって……。わたし、何を……」

呪術女「勇者、の、熊の叫び、は、他、に、伝わる」
盗賊「なるほど、同じ格好してる奴に伝わるんだな……。魔法使いが喜びそうだぜ」
術士「ところで、何故、呪術女が王国領に……?」

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Post-0167

魔法使い「と言うわけで、ごめんね、お兄さんはもういないんだ」
禁術娘「それは……もうわかってるよ、ねェ」
魔法使い「だから、そのナイフは自由に使って。でも、僕も身を守らなきゃいけないから、黙ってやられるとは約束できないよ。ごめんね」
禁術娘「まあ殺そうとすりゃ殺されるよ、ねェ……。襲ってくる他の禁術持ちもみんなそうさ」
魔法使い「うん。僕はお兄さんに悪意こそあったけど、それでどうこうしようと思ったわけじゃないんだ。でも、その結果お兄さんがいなくなった事は否定しないよ」
禁術娘「丁寧に、話すねェ」
魔法使い「当然だよ。君は安心してるけど怒ってもいる。それは遺族として当然だよ」
禁術娘「舌ピになりたい酔狂にも見えないし、ねェ……」
魔法使い「とりあえず安心して話し続けていいのかな……?普通禁術っていうと国と魔法学院に止められた術を指すと思うんだけど。」
禁術娘「アタシらの言う禁術はそんな可愛いものじゃない、ねェ。魔術が体系化された時に切り離された、破術と呼ばれる魔術体系さ」
魔法使い「聞いた事だけあります。魔法学院ではメンターの僕ですら触れる事が許されない領域だ……」
禁術娘「ははッ、メンター様だったのかい。まあ破術って言っても難しい術じゃない。難しくないのにとんでもない効果がでるから駄目なのさ」
魔法使い「そういえば、お兄さんは気軽に破城の鉄槌を3回連続で唱えていた……」
禁術娘「隕石が降るクラスの魔法を3連続で唱えるのは、ちょっと天才を超えている、ねェ?」
魔法使い「と、とんでもないですね」
禁術娘「それを、アンタは頭脳だけでコピーした……。やっぱり殺しておこうか、ねェ?クズの分のピアスが余ってる。舌につけて大事に連れ歩いてやるよ」
魔法使い「使わないから見逃して貰う、という訳には」
禁術娘「あはは、アタシは見逃してやるよ。ただ、今アタシが死んだら破城の鉄槌持ちはアンタ一人になる、その瞬間、アンタの人生は変わる」
魔法使い「今ではなく、僕1人になったら?」
禁術娘「死ぬなら先に死んだ方がいいよ。破術は決して失われない。なぜなら」
魔法使い「なぜなら……」
禁術娘「その術を知る最後の一人は、死なない」

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Post-0164

魔法使い「詳しく話す前にまず、街ごと僕を殺すのではなく僕だけを殺すと誓って。これを使っていいから。人を巻き込まないでくれる?」
少女「意外と、肝が、座ってるねェ。まあ殺す手段は問わないよ。悪かないナイフ……この、紋章は……!?」
魔法使い「うん、見覚えがあるならお兄さんで間違いない。お兄さんの唯一の形見だから、まず返すよ」
少女「形見……。本当に、あのクズは死んだんだねェ……。こんな手がかりを回収せずに立ち去るようなマヌケじゃない、ねェ」
魔法使い「うん、詳しく話してもいい?」
少女「そうか……。じゃあ、クズの分はピアスを増やさなくていい……ねェ」
魔法使い「お兄さんについて、怒っているのに安心しているんだね。話し終わっても僕が生きていたら後で詳しく教えて。」

少女「つまり、あのクズは出会った時点で雌蜘蛛に憑かれていた、と。そして黄金の呪いに蝕まれ、聖騎士の手によって消滅した」
魔法使い「うん、経緯としてはそうだけど、お兄さんが消えた理由は僕らにある」
少女「あのクソ野郎をこの手で殺せなかったのは残念だけど、消えたならそれでいい、ねェ。これでクズとアタシの持っていた禁術は、アタシだけのものになった、ねェ」
魔法使い「ごめんね、禁術って、お兄さんの使っていた破城の鉄槌?あれなら詠唱を2回見て発動を1回見たから、多分僕同じ術使えるよ」
少女「はぁ?禁術の<能力複製>使わないで詠唱聞いただけで使えるっての……?」
魔法使い「うん……多分」
少女「あははははは!ア、アタシ達が殺し合って無理矢理引き出して集めている禁術を、お前は、見ただけで、ねェ……あはははは」
禁術娘「あはははは……死にな。詠唱破棄!<破城の鉄槌>!」
魔法使い「あわわ、<対抗呪文>!」
禁術娘「あはははは!<対抗呪文>で打ち消せるのは使える呪文だけだよ、ねェ。本当に使えやがる……」
魔法使い「やられました。範囲を絞って僕に当たらないように打つ事で<対抗呪文>を引き出しましたね……」
禁術娘「まあそういう一族だからね……。しかし困った。禁術使いは禁術を集める。相手が追ってこないように殺す。同じ禁術を複数が持つのはあらゆる意味で認められない、ねェ」
魔法使い「じゃあ、そうなっちゃう感じ、ですか……?」
禁術娘「構えなくていい。アタシはこんな下らない殺し合いは好きじゃない。襲いかかってくる相手には容赦できないが、そうじゃない相手をどうこうしようとも思わないよ、ねェ」
魔法使い「じゃあ、ちょっと安心してもいいんですよね……?」
禁術娘「アンタならこの舌ピアスに加えてあげてもいいんだけど、ねェ」

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Post-0162

魔法使い「戦士さん達そろそろ帰ってきますね。せせらぎ村のワインでも買いに行きましょう」
ごろつき「なあねーちゃん、俺たちと遊ぼうぜ?」
少女「近づくな。街ごと吹き飛ばされたいのか、ねェ?」
ごろつき「おー怖い怖い。いいから付き合えよ」
魔法使い「あれ、あちこちにピアスをつけてる女の子だ。ちょっと怖いけど困ってるんだよね、きっと」
魔法使い「ねえ、ナンパ断られて食い下がるのは格好良くないよ」
ごろつき「あンだって?って、魔法使いか……」
魔法使い「あ、僕のこと知ってるんだ。じゃあわかるよね?僕殴られても引き下がらないよ?」
ごろつき「けッ、腰巾着の分際で!戦士とかが来る前に見逃してやるよ」
魔法使い「戦士さん今いないですけどね。でも見逃してくれるなら。さ、行きましょう」
少女「触んな!気安いんだよ、ねェ?」
魔法使い「ご、ごめんね。連れ出すのが嫌なんじゃなくて触ったのが嫌だったんだよね。それは本当にごめん」
少女「ちッ、ついてってやるよ。お代になんか奢って貰うよ、ねェ?」
魔法使い「あはは、じゃあお茶でも。これって僕がナンパした事になるのかな?」

魔法使い「落ち着いた?ここのお茶は茶葉も蜂蜜もいいんだよね」
少女「悪かない、ねェ」
魔法使い「気に入って貰えて良かった」
魔法使い「見かけない顔だけど、もし良かったら力になるよ」
少女「んー。まあ素人になら話してもいいかも、ねェ」

魔法使い「なるほど、禁術を求めて旅立った兄を探している、と。黒髪でいつもニヤニヤしていて口癖が『ねぃ』。」
少女「そう、手段のために目的を選ばないクソ野郎だ。禁術が漏れる前に殺さないと、ねェ?」
魔法使い「ごめん、僕には心当たりがある。そして、僕らのせいでお兄さんはもうこの世にいない」
少女「……なんだと……!?口を慎め、お前は今街と共に死ぬ運命の分岐路にいるぞ」

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